2016/01/18 安倍首相/厚生年金の未加入対策強化を指示/厚労省と年金機構、調査・加入勧奨へ

【建設工業新聞 1月 18日 1面記事掲載】

厚生年金の未加入対策が強化される見通しとなった。日本年金機構の調査によると、厚生年金の加入条件に合致する可能性がありながら加入していない事業所が、建設業を含む全産業で約79万社に上る。13日の衆院予算委員会でこの問題が取り上げられ、安倍晋三首相は、厚生年金の適用要件に合うかどうかの調査を「計画的、確実に行う」と表明。これを受け厚生労働省と同機構は、実態調査を急ぎ、未加入の事業所に加入を勧奨する。

厚生年金を含む社会保険加入の促進は建設業界でも大きな課題。首相の指示が出たことで、関係機関の未加入対策に一段と力が入りそうだ。

13日の衆院予算委で安倍首相は、厚生年金とともに健康保険についても、「保険料を納めるべき事業所が放置されているのは問題」と指摘。実態調査をはじめ、必要な対策の実行を塩崎恭久厚労相に指示した。

首相の指示を受けて厚労省は、厚生年金に加入しなければならない可能性がある事業所に調査票を送付し、従業員の人数や労働時間などが厚生年金の加入義務に合致するかどうかを精査。その上で任意適用の事業所を除き、加入指導を重点的に行う方針を決めた。同機構の担当者による事業所の訪問も予定している。調査後の加入措置の具体的な内容は、厚労省と同機構が今後詰める。

厚生年金は、従業員数などが一定の条件を満たす事業所に対しては法律で加入が義務付けられている。保険料は従業員と雇い主が同額を負担する。このため、保険料負担を回避することを目的に、加入義務があるにもかかわらず年金事務所に届け出を行わず、違法に加入を逃れている事業所があるとされる。

従業員に対し、年金額が少ない代わりに保険料も安い国民年金への加入を求めていたりする雇い主もあるという。厚労省によると、厚生年金の加入条件に合致しながら国民年金に入っている人は約200万人に上る。

建設業界では、全国建設業協会(全建)が社会保険加入に関する広報ツールを拡充。日本建設業連合会(日建連)は4月以降、1次下請に対し、社会保険に適正に加入していない2次以下の下請企業と再下請負契約を締結しないよう指導を徹底する。国の取り組み強化で、業界の対応もさらに活発化しそうだ。

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