2008/10/23 地方建設業が危ない-経営力強化への道・連載1/破たん連鎖、老舗企業にジレンマ


【建設工業新聞 10月23日 記事掲載】

  群馬県を代表する建設会社で東証2部上場の井上工業が今月16日、東京地裁に自己破産を申請し、破産手続き開始決定を受けた。08年に入ってから上場建設会社の倒産は、真柄建設、三平建設、新井組に続きこれで4社目。これ以外にも、地域を代表する老舗建設会社の経営破たんが相次いでおり、このままでは地方の建設業界は壊滅状況に追い込まれかねない。背景には何があるのか、この状況を打破するには何が必要なのか-。地方の建設業経営をめぐる現状と講じるべき対策を追った。
  08年に入り上場会社以外で経営破たんした建設会社には、山梨県の長田組土木、高知県の四国開発、富山県の林建設工業、宮崎県の志多組などがある。いずれも地域を代表する有力企業で、その多くは明治、大正時代に創業した老舗だ。各社の倒産要因を分析すると、公共事業の減少で頼みの土木工事の受注が減少。その落ち込みをカバーしようと、大都市圏の民間マンション事業に進出したものの、深刻な不動産不況で工事代金の回収が滞り、資金繰りが急速に悪化したというケースが目立つ。破たんした企業の中には、創業からの一族経営を脱皮して外部から社長を迎え入れたところもあり、多くは新たな経営計画を策定して事業を整理するなどの経営努力を重ねてきたが、実を結ばなかった。
  地域を代表する建設会社が相次ぎ破たんする現状について、国土交通省総合政策局の谷脇暁建設業課長は、「(これらの企業は)公共事業が減少する中で地域の雇用を維持し、一定の技術力もあり、大都会の事業でカバーできるだけの体制もあったということ。各社とも(経営を)スリム化できるならともかく、そうはいかない事情があり、都会に仕事を求めた」と分析する。
  たとえ従業員を解雇しても、地域でほかに働く場所はほとんどない。建設機械を手放してしまえば、災害などの緊急時に地域を守ることができなくなる。地域を代表する企業であればあるほど、地域のために雇用を維持し、建機も抱え込まざるを得ない。固定費はかさみ、一定量の仕事がなければ会社は回らず、無理をしてでも仕事を確保する必要が生じて身動きが取れなくなる。「企業経営」と「地域振興」の両立―。地域を代表する建設会社のジレンマがそこにある。

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