2008/11/26 内需拡大へ公共事業必要/業界首脳、相次ぎ発言/意見発信、積極姿勢に転換


【建設工業新聞 11月26日 記事掲載】

  米国発の金融危機に端を発した世界的な景気後退を受けて、内需拡大による景気てこ入れ策として積極的に公共事業を行うべきだとの声が建設業界内で高まってきた。日本建設業団体連合会(日建連)の梅田貞夫会長、日本土木工業協会(土工協)など土木4団体の葉山莞児会長は先週、冷え込む景気を刺激するためには公共事業が必要だと相次ぎ発言。葉山氏は21日、会長を務める日本ダム協会のパーティーで「ここ数年言わずにいたが、これからは積極的に言っていく」などと述べ、公共事業の必要性について団体活動を通じて活発に情報発信していく考えを明らかにした。
  梅田、葉山両会長が公共事業の積極的な展開を公の場で訴えた背景には、内需拡大に向け政府が景気対策を検討する過程で、公共事業の積み増しに関する議論が盛り上がらない現状への不満がある。葉山会長は、1986年4月に公表され、内需拡大や市場開放をうたった「前川リポート」を引き合いに出し、「(リポート発表から)20年が経過したが同じことを言っている」と指摘。これまでは「仕事がほしいからだと思われる」などとして、公共事業の必要性を積極的に訴える活動は控えてきたが、今後、必要な意見は活発に発信していく方向への姿勢転換を明確にした。
  一方、21日の理事会後の記者会見で梅田会長は「公共工事が内需拡大の手段の一つであることは間違いない。公共事業に関する議論を深め、必要な事業に予算を配分するべきだ」と発言した。公共事業に予算を配分するには、公共事業に対する国民の理解を高める必要もあるとの見方を示し、「地方と中央の格差が言われている。格差是正に重点を置いて投資が行われるべきだ」とした。
  輸出に支えられてきた日本の好景気が、世界的な不況で後退を余儀なくされる中、政府は内需拡大による経済の立て直しを目指すとしている。だが具体的な方策は見えておらず、公共事業による景気刺激の議論は活発ではないのが現状。ここへきて業界首脳の2人がそろって訴え始めた内需拡大策としての積極的な公共事業の実施。今後、こうした声が国民にどの程度理解され、どのように政策に反映されていくのか、大きな注目点となる。

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