2008/12/05 景気浮揚へ内需拡大/公共投資、各国で増額機運/抑制続けばインフラ荒廃も


【建設工業新聞 12月5日 記事掲載】

  政府の09年度予算編成の基本方針が3日に閣議決定され、小泉政権以降の歳出抑制路線を実質的に転換する方向が固まった。削減が続いてきた公共事業費が今後どの程度上積みされるかは不透明だが、11月の金融・世界経済に関する首脳会合宣言を踏まえ、既に各国は次々とインフラ整備による内需拡大政策を打ち出している。シーリング(概算要求基準)とは別枠での財政出動を視野に、与党は5日に雇用対策をまとめるが、1兆円の公共投資には約13万人を超える雇用創出効果があるとの試算もある。国土の荒廃を招かないためにも、公共事業のさまざまな効果を再検討し、必要な財政出動を図る必要がありそうだ。
  09年度予算編成の基本方針では、7月に決定したシーリングを「堅持」から「維持」に弱め、別枠で大型の財政出動を行う道を開いた。公共事業費についても3%のマイナスシーリングは「維持」しながら、別枠で上積みされる可能性があるが、実際にどうなるかはまだ見えていない。基本方針では、世界的金融危機を打開するための11月の首脳会合宣言を踏まえ、機動的かつ弾力的に内需拡大を図るとの方向も示された。
  首脳会合宣言を踏まえ、既に各国政府は公共投資を主眼とする経済政策に乗り出している。中国は4兆元(約54兆円)の内需拡大策を発表し、鉄道、道路、空港などの重要インフラや住宅、農村の整備を進める。韓国も09年に景気浮揚策として14兆ウォン(約8820億円)を投じる計画を明らかにし、うち4兆6000億ウォン(約2900億円)はインフラ投資だ。ドイツも500億ユーロ(約5兆9000億円)の景気対策を打ち出したほか、米国ではオバマ次期大統領が景気刺激策として250億ドル(2兆3300億円)をインフラ整備に充当する方針を示した。各国とも、機動的かつ弾力的な内需拡大策として、積極的な公共投資へと動いている点が共通する。
  日本では、別枠で財政出動を上積みするため、雇用対策が検討されているが、労働力の産業関連分析の00年データを使った内閣府の試算によると、1兆円の公共投資による雇用創出効果は13・6万人に及ぶ。国際競争力を維持し、「荒廃する日本」を回避するためにも、公共事業のあり方を見直す時期に来ていることは間違いなさそうだ。

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