2008/12/05 ゼネコン各社/工事採算回復の兆し/超大手は海外がマイナス要因に


【建設工業新聞 12月5日 記事掲載】

  ゼネコン各社の工事採算が、回復の兆しを見せている。11月に上場各社が発表した08年4~9月期決算で、売り上げ計上した工事の採算を示す単体の完成工事総利益率(粗利)は、3月期決算企業の上位23社中16社が前年同期を上回った。海外での損失によってマイナスの利益率となった大手があったものの、多くは一連の安値受注問題に歯止めがかかり、各社とも採算好転の理由に「低採算工事の計上が、前期までにほぼ終わった」と、口をそろえる。通期予想を下方修正する企業が相次いでいるが、前年度実績よりは高めに見ており、長く続いた採算低下傾向もようやく反転しそうだ。
  4~9月期は粗利を急回復させた中堅クラスが数社あった一方で、大手の一角で積極的な海外進出が裏目に出た。前年同期、粗利の低かった企業では、採算重視の選別受注やコスト削減など従来の取り組みが奏功。「昨年ころから赤字工事を徹底排除し、鋼材など資材価格高騰も(契約)価格に織り込むなど、工事利益の改善努力が実を結んできている」(福田幸二郎前田建設取締役常務執行役員)。採算性の高い前期からの繰り越し工事が売上計上されたこともあり、利益率が大幅に改善した。
  スーパー各社はそろって海外事業での損失が採算悪化を招いた。「海外の採算悪化が響き、土木の利益率では初のマイナスとなった」(岡本敦大成建設副社長)など、想定を超える海外でのコストアップの価格転嫁が進まず、清水建設と大成建設は土木分野でマイナスの利益率を計上した。マイナスとはならないものの、「国内土木は好調だったが、海外は利益が出なかった」(白石達大林組社長)など、海外での低採算が全体の利益を圧縮させたと分析している。
  通期業績見通しにおける粗利は、期初予想を下方修正する企業が多くを占めるものの、前期実績よりは改善すると見込んでいる。利益の圧縮要因となっていた資材価格や労務費の高騰が一段落したことなどが理由。「値下げ傾向にあるのは確かだが、仕入れ時点と比べると高値安定」(渡辺英人清水建設経理部長)という見方がある一方で、「資材高騰は、ひところよりは落ち着いた」(武捨実長谷工コーポレーション財務経理部部長)、「労務の需給が緩和されてきた」(山田恒太郎安藤建設社長)など、明るい展望も見え始めている。

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