2009/1/27 地域建設業経営強化融資で貸し渋りの誘発懸念/全中建、会員調査で課題浮上

【建設工業新聞 1月 27日 記事掲載】

景気後退が深刻化する中で、中小建設業者にとって資金繰りが経営上の大きな課題になっている現状が、全国中小建設業協会(全中建、岡本弘会長)の調査であらためて浮き彫りになった。会員企業に対し協会活動に対する要望を聞いたところ、公的融資制度に関する意見が数多く寄せられた。公共工事の請負代金債権を利用した融資制度として昨年11月に国土交通省などが新設した「地域建設業経営強化融資制度」については「制度の利用を逆手に取られ、銀行に融資枠を狭められる懸念がある」など、運用面での課題を指摘する声が多く上がった。

調査は会員の意見を運営に役立て、協会活動の活性化を図る目的で昨年末に実施した。調査結果を見ると、「工事を落札すると直ちに契約書を持って銀行に駆け込み、融資を受ける会社も多い」と中小建設業者の資金繰りの実態を明かす回答が寄せられ、施工途中で代金債権を譲渡して融資を受ける地域建設業経営強化融資制度について「こうした会社が制度を利用することはない」との指摘があった。さらに、前払金や中間前払金をもらった上に同制度を利用した場合、「金融機関に(経営が)苦しい企業と判断される恐れがある」と不安を訴える意見も寄せられた。各金融機関は融資姿勢を厳格化しており、「制度の利用を逆手に取られ融資枠を狭められる懸念がある」との指摘や、「未完成工事部分を融資に利用することを『赤字補てん』ととられる可能性がある」と危ぐする声も上がった。

経営環境が厳しさを増す中、会員企業の間で「少数の地域を除いて地方協会は維持できない」との危機感が広がっていることも分かった。中小建設業の苦境を反映し、国交省の政策に対し「建設業者の救済よりも淘汰(とうた)が進んでいくことを望んでいるのか」と疑問を投げ掛ける意見も寄せられ、協会事務局に「国交省の代弁者ではなく、会員の代表として発言する必要性を感じる」と注文を付ける厳しい指摘もあった。

全中建は今回の調査結果を踏まえ、「中小建設業の健全な発展に向けた融資制度の拡充」「安全・安心に必要な公共事業予算の確保」やなどを協会活動の目標に掲げ、国交省などに実現を強く求める方針だ。

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