2009/2/2 国総研・西川和廣研究総務官に聞く/公共調達-市場競争の前提不完全

【建設工業新聞 2月 2日 記事掲載】

激しい価格競争や資材価格の変動で利益が上がらず、多くの建設会社が苦境にあえぐ中、国土交通省国土技術政策総合研究所(国総研)の西川和廣研究総務官兼総合技術政策研究センター長は、日刊建設工業新聞のインタビューで、現状の公共調達市場で、落札価格が市場メカニズムに基づく適正価格だとする考え方に異論を唱えた。西川氏はその理由として、建設投資の削減で需給バランスが崩れ、建設会社が正常な心理状態にないことや、公共事業特有の競争阻害要因が存在する点を指摘。「(公共工事の市場は)前提条件である完全競争状態になっていない」との見解を示した。

公共調達でも競争原理だけが正しく、『神の見えざる手』による落札価格が適正価格なのか-。この点について西川氏は、「市場メカニズムが正常に働き、完全競争状態にあることが前提条件だ」と指摘。建設投資がどこまで減り続けるかが分からず、「不安で正常な心理状態ではないのに、市場における落札価格をもって適正価格というのは間違いだ」と述べた。西川氏はまた、入札段階での談合・調整行為など「公共市場には『神の見えざる手』を阻害する要素もあった」と説明。現在でも、選ぶ側と選ばれる側の片務性、予定価格の上限拘束性や歩切りなどの阻害要因があることを指摘したのに加え、適正価格を考える際の大きな問題として、受注者側の過度なリスク分担の問題を挙げた。

受・発注者のリスク分担は本来、事前の協議と合意によって決められるものだが、西川氏は、日本では予算主義の中で発注者は身動きが取れず、民間にさまざまなリスクを負わせてきたとの見方を示した。さらに、受注者に負わせたリスクを発注者がどこかで埋め合わせできた指名競争入札の時代と違って一般競争入札が普及した現在はそうした仕組みがなく、「民間に過度にリスクを負わせたまま一般競争に移行したため、民間には見えないリスクを価格でどうみてくれるのかという不満がある」と述べた。

西川氏は、品質管理や工期順守といった受注者が負う見えないリスクを価格として適正に評価するべきだと強調。需給のバランスが取れ、受注者側が将来需要を予測できて平常心で応札価格を決められる市場環境を早急に整備する必要性を訴えた。

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