2009/3/25 民間工事急減、製造業が顕著/失業予備軍100万人、問われる公共投資増の中身

【建設工業新聞 3月 25日 記事掲載】

景気の冷え込みが建設市場に一段と深刻な影響を与え始めている。公共工事の減少分をカバーし、ゼネコン各社の受注を下支えしてきた民間工事の発注が、金融危機が表面化した昨秋から激減。世界同時不況を受けて輸出関連産業を中心に設備投資を手控える動きが広がったことから、特に製造業からの工事受注に急ブレーキが掛かっている。

日本建設業団体連合会(日建連、梅田貞夫会長)が会員企業を対象に毎月まとめている受注実績調査。その数値に大きな変動が出始めたのは昨年11月のことだ。米国発の金融不安が世界に波及し、各国が同時不況に陥った影響を受け、自動車や家電といった輸出関連産業のメーカーが軒並み設備投資の抑制に動いた。製造業からの受注額は、昨年11月に前年同月比43・5%減となって以降、12月は36・1%減、今年1月には52・0%減と記録的な減少幅になっている。

民間からの受注額は07年度の実績が過去10年で見ても高水準にあったことから、08年度の大幅マイナスには反動減の要素が含まれるものの、それを差し引いても現状を楽観視する声は業界にはない。日建連の梅田会長は「09年度はシビアな傾向が強まる。建設業の経営は厳しい環境にさらされるだろう」と危機感を募らせる。建築業協会の野村哲也会長も「建築工事は設備投資に負うところが大きく、1年先、1年半先まで厳しい見通しを持っている。投資のストップや先送りも出始めている」と先行きに悲観的だ。受注環境の厳しさは、いずれは雇用問題につながるとみられ、日本土木工業協会など土木4団体の葉山莞児会長は「仕事の回転が落ちれば、半年後、1年後には100万人オーダーで(建設産業から)失業者が出るかもしれない」と警告する。

民間工事が冷え込む中で、業界の期待が高まっているのが公共投資だ。ただ、国、地方とも財政難が深刻なだけに、予算を積み増す場合も、環境や安全・安心、地方活性化、国際競争力といった将来を見据えた分野に投資を重点化する戦略が欠かせない。一時のカンフル剤としての増額に終われば「ばらまき」との批判を浴びかねない。公共事業を積み増す場合も、その中身が問われることになる。

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