2009/3/30 国交省検討会/公共事業労務費調査の改善へ報告書/賃金調整の有無確認へ

【建設工業新聞 3月 30日 記事掲載】

国土交通省の「公共工事設計労務単価のあり方検討会」(座長・常田賢一阪大教授)は、公共事業労務費調査の改善などに向けた報告書をまとめた。調査手法の改善では、年金受給などの関係で行われている賃金調整が調査結果に影響しないようにすることを検討課題として挙げた。民間工事や小規模工事を調査対象に追加することや、低入札価格調査の対象工事を調査対象から除外することは困難との方向を示した。労務費調査で就業規則の不備などがあった事業主に対する指導の実施も検討するとしている。入札契約の適正化の観点から、雇用保険や社会保険の加入状況を入札参加資格審査などに反映させることも検討すべきだとした。

公共工事の設計労務単価をめぐっては、ダンピング受注の多発などの影響で労働者の賃金が下がり、その結果、労務単価の調査結果も下がるという悪循環に陥っているとの指摘がある。こうした現状を踏まえ、同検討会では、労務費調査のあり方に加え、入札契約や元・下請関係の適正化、労働条件の確保・改善などまで幅広く議論した。

労務費調査の適正化では、65歳以上の労働者などの賃金調整が調査結果に影響しないよう方策を検討するとした。年金受給時の所得制限などを考慮して、1日当たりの賃金を低く設定しているケースがあり、調査の際に賃金調整の有無に関するチェックを導入する方向だ。経験年数がごく短い労働者が調査対象となっている事例もあるため、建設業界団体などと連携しながら、職種ごとに技能水準の判断基準を作成するといった対策も検討するとした。職種の新設・統合・廃止などは中長期的な課題とした。

労務費調査では、就業規則の不備などで調査票が棄却されるケースが約4割程度生じている。労務費調査は本来、労務賃金のデータ収集だけを目的にしているが、厚生労働省と連携し、調査票が棄却された事業主に対して必要な指導を行うことも検討するとしている。雇用保険や社会保険への加入促進を図るため、入札参加資格などで加入状況を評価し、雇用保険などに加入していない業者は入札に参加できないようにするといった措置が可能かどうか検討することも課題に盛り込んだ。下請業者の保険加入状況の確認方法も検討課題としている。

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