2009/9/18 国交省、前原体制スタート/八ツ場、川辺川ダム事業中止を正式表明

【建設工業新聞 9月18日 記事掲載】

民主党の前原誠司氏が国土交通相に就任し、国交省における新体制がスタートした。17日に会見した前原国交相は、人口減少、少子高齢化、国の長期債務といったわが国の不安要素を背景に、どこに優先的に税金を使うべきかを考えれば、新規事業を減らさざるを得ないと指摘。八ツ場ダム(群馬県)と川辺川ダム(熊本県)の事業中止を入り口に、公共事業の見直しを進める決意を表明した。建設業界については「役割は極めて大きい」と認めながらも、新たな社会資本整備を進めれば維持管理にお金がかかると述べ、新規整備よりも維持管理への役割を示唆した。

前原誠司国交相は17日、職員を前に国政への思いを明らかにし、政権交代をさまざまなことを変える転機とするため、意識の共有と協力を要請した。職員の知恵や意見に耳を傾けながら、より良い国土交通行政を目指す考えを表明。組織の一員ではなく、国民に仕える立場でどういう税金の使い方が良いのか、考えてほしいと職員に呼びかけた。前原国交相は「一番の問題は日本の経済・景気の問題だ」と指摘。財政出動で大恐慌のシナリオは避けることができたが、財政出動を続けることは難しいとし、「所管行政の中でさらに伸ばせる分野がないかを考えてほしい」と訴えた。具体的には、観光分野を挙げ、海外から多くの観光客を呼び込める環境を整備し、多くの雇用を抱える産業に育てたいと強調。国際競争力を確保するため、航空、港湾政策を充実させる方針も示した。

記者会見で前原国交相は「八ツ場ダムと川辺川ダムは(事業見直しの)入り口と考えている。八ツ場ダム一つが損か得かで考える問題ではない。河川行政や公共事業のあり方を見直す入り口と、国民の皆さんに思っていただきたい」と述べ、140以上あるダムや導水路の計画も含めて、事業の仕分けを行う方針を示した。整備新幹線も事業を精査する対象とした。

このうち、八ツ場ダムについては「中止について、ご理解を頂き、その方向で取りまとめさせていただきたい」と述べた。中止に向けては「何らかの補償を法的枠組みや財政裏付けをもってやらないといけない。丁寧な対応をしていく」と語った。さらに、早ければ来週中にも地域住民や関連する地方自治体との協議を行いたいとの意向を示した。

日刊建設工業新聞の購読申し込みは、こちら

戻る