2009/9/29 逆風強まる大型公共事業/各地で中止・見直し要望/地元業者の経営に影響も

【建設工業新聞 9月29日 記事掲載】

前原誠司国土交通相が八ツ場ダム(群馬県長野原町)や川辺川ダム(熊本県相良村)の建設中止へと動く中、他の各地でも、大型公共事業の中止や見直し要望が相次いでいる。名古屋市の河村たかし市長は、市の大型事業の一つ「陽子線がん治療施設整備事業」を一時凍結。国が計画中の木曽川水系連絡導水路の事業中止も要請した。秋田県では、国が進めている成瀬ダム(東成瀬村)の建設事業を中止するよう市民団体が要望。沖縄県では県選出国会議員らが米軍普天間飛行場(宜野湾市)の移設計画見直しを北沢俊美防衛相に求めた。大型公共事業に対する逆風は各地で強まりつつある。

前原国交相が17日に民主党の政権公約通り八ツ場、川辺川両ダムの建設中止を発表した翌日、民主党出身の河村名古屋市長は、市の大型公共事業の一つだった陽子線がん治療施設整備事業を一時凍結する方針を表明した。同事業は、陽子線をがん細胞に照射する最先端治療設備を整えた施設を整備する計画で、総事業費は245億円。河村市長は「陽子線を使わなくても名古屋近郊には代替施設がある」と凍結理由を述べた。さらに河村市長は24日、前原国交相を同省に訪ね、徳山ダムの貯水を木曽川に引く国の大型プロジェクト・木曽川水系連絡導水路について、「導水路は不要」ととして事業中止を要請した。八ツ場ダムの中止表明で地元や関係自治体から批判を浴びている前原国交相を側面支援した格好だ。

大型公共事業の見直しを求める動きは市民や議員にも拡大している。秋田県では24日、市民団体「成瀬ダムをストップさせる会」が環境保護や地域再生などの観点から、成瀬ダム(概算事業費約1530億円)の事業中止を求める国交相宛の要請書を提出した。沖縄県では、喜納昌吉参院議員ら県選出・出身の与党議員7人が、普天間飛行場のキャンプ・シュワブ沿岸部(名護市)への移設計画を見直すよう北沢俊美防衛相に申し入れ、北沢防衛相も「前向きに検討する」と応じた。

これまで国などが進める地元の大型事業に反対してきた市民や自治体にとって、政権交代による公共事業の見直し加速は追い風になっており、今後も各地でこうした動きが相次ぐ可能性もある。結果次第では、地方建設業者の経営にも大きな影響を与えそうだ。

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