2009/10/28 前原誠司国交相/八ツ場ダム、事業効果を再検証へ/地元と協議へ方針転換

【建設工業新聞 10月28日 記事掲載】

前原誠司国土交通相は27日、建設中止を表明している八ツ場ダム(群馬県)の事業効果を再検証すると発表した。「建設中止ありきの話し合いには応じられない」としている地元住民の感情を考慮し、事業の見直しを行う全国141ダムと同様に「予断を持たずに再検証する」と明言。事態の打開に向けた新たな提案によって地元との早期の対話に臨む姿勢を示した。八ツ場、川辺川(熊本県)を含む143ダムの今後の事業評価については、専門家チームを立ち上げ、事業推進の可否を判断するための基準づくりを進める方針を表明した。

前原国交相は同日の閣議後会見で「(八ツ場ダム)建設予定地の住民には話し合いの機会を持たせてほしいと要望してきたが、残念ながら対話はできなかった」とこれまでの経緯を説明。その上で「中止ありきで走っても(地元は)議論のテーブルにのってくれない。このままでは住民の将来も見えない」と指摘し、状況打開のための新たな提案として事業効果の再検証を行う考えを明らかにした。八ツ場ダムの利水・治水効果に関する見解の相違から国交相と対立している関係1都5県の知事に対しても「予断を持って再検証することはしない。約束する」と一定の配慮を示した。

ただ、前原国交相は民主党がマニフェスト(政権公約)で掲げた八ツ場ダムの建設中止は堅持しながら事業効果を再検証する方針。ダムの効果についても「200年に一度の大洪水への対応を前提に事業が進んでいるが、これは本当に必要なダムなのか」と疑問を呈した上で、「(57年前の計画時から)利根川の河川整備は進み、当時と状況は変わっている」と指摘した。治水効果については「仮に八ツ場が完成しても2万2000立方メートル分にはさらにダムを造り続けなければならない」と述べ、利根川の流量想定が過大だとの見方を示すとともに、利水効果に関しても「1970年代をピークに工場や生活用水の需要は減っている」とこれまで通り1都5県の知事とは異なる見解を示した。

今後の議論の方向性に関しては「ダムを造れば砂がたまり、吐水能力も落ちる。浚渫のための将来コストもかかる」と持論を展開。「地元と意見交換ができる状況をつくり、できるだけダムに頼らない治水対策を検討したい」と述べた。

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