2009/12/04 建設就業者50万人減/土工協が見通し、09~10年に/早急な雇用対策不可欠

【建設工業新聞 12月4日 記事掲載】

景気の二番底への懸念が強まる中、建設市場の縮小が雇用確保に及ぼす悪影響を指摘する声が業界で高まっている。日本土木工業協会(土工協、中村満義会長)は、建設投資の減少が続いた場合、09~10年の2年間で「建設就業者数が50万人程度減少する懸念がある」との見通しをまとめた。全国建設業協会(全建)の淺沼健一会長も「年末、年度末に向けて自殺、失業、倒産が増加するのではないか」との懸念を協会の会合などで表明している。市場の急激な縮小で建設業の雇用吸収力が失われつつある形で、政府には雇用確保に向けた早期の対応が求められそうだ。

土工協の中村会長は3日、東京都内で開いた支部長会議の席上、「9月に誕生した新政権は公共事業の見直しと大幅な削減方針を打ち出しており、景気回復の流れを大幅に減速させてしまうと危ぐしていたが、景気失速が現実のものになりつつある」と発言。鳩山内閣の公共投資に対する厳しい姿勢が景気回復の足かせになっているとの見方を示した。同日の理事会に報告された資料では、日本の国内総生産(GDP)が名目値では08年第2四半期(4~6月)以降、09年第3四半期(7~9月)まで6四半期連続でマイナス成長となっている状況を指摘。07年の実績を基準に比較した場合、米国や英国など主要7カ国の中でも日本の景気後退は顕著で、かつ回復も遅れていると分析した。

建設産業については、総務省の就業者統計のデータを基に09年1~10月の平均値で建設業の就業者数が515万人と、08年と比較して22万人も減少していることを指摘。景気低迷による民間投資の落ち込みに、今後、公共投資の激減が加われば、09~10年の2年間で「就業者が50万人程度減少することが懸念される」と警鐘を鳴らした。

公共投資の経済効果に懐疑的な意見がある中で、全建がまとめた会員企業の倒産状況調査を見ると、09年1~9月の倒産発生件数は252件と、前年実績に比べほぼ半減している。倒産件数が大幅に減った背景には、昨秋のリーマンショック以降、政府が実施した公共投資の積み増しや、公共工事の前倒し発注などの景気対策があるのは確実で、事業量の増加が、建設会社の相次ぐ経営破たんに歯止めを掛け、雇用確保にも一定の効果を上げたとみられている。

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