2009/12/24 公共事業見直し/国交省、有識者ら議論が本格化/意見続出で調整難航も

【建設工業新聞 12月24日 記事掲載】

前原誠司国土交通相が9月の就任直後から打ち出してきた公共事業のあり方を見直すための作業が今月から本格的に始まった。見直しの対象はダムや港湾、整備新幹線など多岐にわたり、それぞれのテーマに対して政務三役が選んだ有識者を集めた専門家会合や、政務三役による会合が相次ぎ開かれている。政権交代から3カ月が経過し、ようやく動き始めた公共事業の見直し論議だが、既に各委員や与党議員からはさまざまな意見が続出。議論を集約できるのか不安視する見方もある。

前原氏の提唱する「ダムに頼らない治水」への転換に向けて新たな治水対策を話し合う「今後の治水対策のあり方に関する有識者会議」。今月3日に開かれた初会合で、各委員からは「そもそも(会議で)取り扱う治水とは何か」「ダムの治水手法にはどんなものがあるのか」「被害をどうとらえるのか」「洪水被害の復興も含め治水対策を評価するべきではないか」などの意見が続出。三日月大造政務官が、各委員から2週間後に論点を出してもらうことで会合を切り上げたが、検討テーマ自体の難しさに加え、意見集約の困難さもうかがわせた。

12月15日に行われた政務三役による「整備新幹線問題検討会議」の初会合では今後の整備方針案をまとめたが、2日後の17日に開かれた与党議員の意見を聞く政策会議で、前原国交相が新規着工区間に関する前政権下での政府・与党合意を白紙に戻したことに対し、一部の議員が異論を唱え、方針案の了承が得られなかった。整備新幹線は選挙区の利害が絡むだけに、調整の難航も予想される。港湾の国際競争力強化に向けて重点的に整備するスーパー中枢港湾や産業拠点港湾を公募・選定するための評価基準づくりを担う「国際コンテナ戦略港湾検討委員会」と「国際バルク戦略港湾検討委員会」。整備新幹線の会合と同じ日に初会合を開いたが、電力、石油など各業界の思惑も絡み、議論の行方は予断を許さない。

有識者会議は来年7月までに順次結論を取りまとめるスケジュールが想定されており、この結論を11年度予算要求に反映させることになる。だが、有識者会議はそれぞれ委員によって意見が異なる上に、来夏の参院選を控えた与党側の思惑も無視できない。政務三役側の思惑通りに議論が進むのかどうか、先行きは不透明だ。

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