2010/1/26 八ツ場ダム建設中止問題/前原誠司国交相、現地で陳謝/住民からは批判続出

【建設工業新聞 1月26日 記事掲載】

 八ツ場ダム(群馬県)の建設中止問題をめぐる国と地元住民らの話し合いが始まった。建設中止を打ち出した前原誠司国土交通相と地元住民らによる初の話し合いが24日に地元の長野原町で行われ、地元からは「われわれは政治にほんろうされている」「地元に何の話もなく、突然の中止は独裁者の発言としか思えない」と批判が続出。建設中止を前提にした新たな生活再建策を話し合いたい前原国交相と、建設中止の撤回を求める地元との意見の隔たりは簡単には埋まりそうになく、今後の交渉は長期化する可能性もある。

 前原国交相は約140人の住民を前に、ダム建設中止の政策転換に対して「すべて政治の責任で、皆様に何ら瑕疵(かし)はない」と陳謝。その一方で人口減少や少子高齢化、ばく大な借金という国が抱える課題を挙げ、「八ツ場ダムを含め河川にお金をかけれられる時代ではなくなった。どこに優先順位をつけるのか考えさせてもらいたい」と訴えた。八ツ場ダム建設事業の今後については「(事業内容の)見直し対象となっている全国143ダムと同様に予断なく再検証するが、国の財政は厳しい。皆さんの気持ちに応えられないようなこともある。生活再建で何ができるかを話し合いたい。何度でも足を運ぶ」と建設中止を前提にした議論を求めた。

 これに対し、住民側からは「われわれは下流域の安全・安心のために、(ダム建設賛成の)苦渋の選択をした。これまでの時間、努力が否定された」「ダムを完成させた場合の費用は新たな治水対策に変更する場合の費用よりも安い。無駄をなくすという考え方と矛盾する」「ダムを前提とした生活再建策しか考えていない。時間はかけられない」といった声が上がった。

 地元から要望があった「生活再建の補償を手厚くしてほしい」という声に対しても、前原国交相は意見交換会後の会見で「具体的な要望事項がないと補償交渉は難しい。共通の土壌に乗った時に議論ができる」と述べるにとどめ、最後まで意見の隔たりは埋まらなかった。

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