2010/07/01 国交省/下請代金保全策の検討着手/産学官会議、「信託方式」の試行提案

【建設工業新聞 7月 1日 記事掲載】

 国土交通省は6月30日、産学官で構成する「新たな下請代金債権保全策検討委員会」の初会合を開き、建設工事での新たな下請代金債権保全策の検討を始めた。初会合のテーマは、下請への支払い資金をあらかじめ銀行などに分離・保全しておき、元請業者が倒産した時に下請への支払いに充てる「信託方式」。国交省は、元請倒産時の出来高査定は弁護士などの第三者が行う仕組みなどを提示し、直轄工事で信託方式を試行することを提案。さらに金融機関が元請倒産時の下請への支払いを保証する「支払いボンド方式」も段階的に導入する方向性を示した。
 
 
 会合では、国交省が信託方式について信託銀行活用型と、企業(元請)が下請への支払い用に信託財産を分離して自己管理する自己信託活用型の二つの方式の活用を提案し、▽保全すべき請負代金債権の割合▽受益権の設定範囲・方法、元請による支払いとの関係▽自己信託の場合の信託財産の分別管理方法▽元請倒産時の出来高査定を行う主体-の4項目の検討を要請した。
 
 
 保全すべき請負代金債権の割合については、下請への外注比率が50~60%程度で、公共工事の前払金(約4割)が現在も分別管理されていることを勘案し、請負代金額から前払金相当額を除いた額の5割程度を下請への支払いのために保全する案を提示した。受益権の設定範囲は、当面の試行として1次下請までを対象に設定し、書面契約と施工体制台帳で明確になっている下請の受益権を受益権付与対象とした。受益権付与の規定については「工事の出来高に相当する受益権を下請に付与する」という方向で協議。元請に対して月次で下請の出来高を確定するよう求める方向性を示した。
 
 
 自己信託活用型の仕組みについては、元請倒産時には事前に定めた出来高査定人が信託財産の配分を決めるとし、出来高査定人には弁護士や建築士、民間の出来高査定機関、「地域建設業経営強化融資制度」の実施主体(事業協同組合など)を挙げた。次回会合で支払いボンドの段階的導入に向けてボンド引受機関のリスク分散の仕組みなどを協議する。検討委は今夏に最終取りまとめを行う。

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