2011/02/08 地域の防災力低下-除雪対応で浮き彫りに/背景に地域建設業の衰退

【建設工業新聞 02月 08日 記事掲載】

 「災害対応空白地域」の拡大も指摘される地域の防災力低下の問題は、昨年末からの日本海側を中心とする記録的大雪でも表面化している。直轄国道が除雪が間に合わずに異例の通行止めに追い込まれたり、地方自治体が、施工中の発注工事を中断してまで除雪作業を優先するよう地元建設業界に要請したりする事態になっている。除雪が思うように進まない背景として指摘されるのが、公共工事の減少による地域建設業の衰退だ。地域の災害対応力をどう維持すればよいのか、国も自治体も頭を悩ませている。
 
 
 1月30日からの大雪では福井県敦賀市の国道8号で車が動けなくなり、ドライバーらは1日以上車内に閉じ込められた。同様の事態は昨年12月25~27日の福島県会津地方の国道49号、12月31日~今年1月2日の鳥取県大山町の国道9号でも発生した。直轄国道は全国の道路網(2万2800キロ)に占める割合は1・9%と少ないが、地域の基幹道路として通常は高速道路や地方道を通行止めにしても除雪をしながら車が通れる状態を確保する。今冬は雪の降り方が例年と違うという面もあるが、除雪が遅れる理由に地域建設業の減少を指摘する声もある。
 
 
 除雪作業は機械やオペレーターを保有する建設業者が担う。国道9号の除雪では、国交省は雪で立ち往生した車の処理などを地元建設業者に要請したが、思うように進まなかった。公共工事の縮小で地域建設業者の数が減り、作業員も高齢化。大雪が降ってもすぐに復旧に動ける業者は減っている。富山県建設業協会が先月、会員に行った調査では、廃業や倒産の懸念が絶えない現状を放置すれば14年度には6割の道路の除雪が滞り、雪で埋まるとの結果が出た。経営悪化で機械を保有、更新できず、オペレーターを抱えられない建設業者も増えている。
 
 
 秋田県横手市や、山形県、新潟県などでは、市や県の発注工事を施工中の地元建設業者に、工事を一時中断して住宅の雪下ろし作業などに当たるよう相次ぎ要請した。地域建設業者の役割は本業の建設事業だけにとどまらない。除雪以外にも、宮崎県や鹿児島県などで行われた口蹄(こうてい)疫や鳥インフルエンザの拡大を防ぐ防疫作業、活発な噴火活動が続く霧島連山・新燃岳の降灰除去など、地域の生活と安全・安心を支える仕事は少なくない。

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