2011/11/21 国交省/経審の完工高に特例/被災工事、滅失分も評価対象に

【建設工業新聞 11月 21日 記事掲載】

 国土交通省は、東日本大震災の被災地で進めていた公共工事が津波などで完成前に被害を受けた場合、その滅失部分を完成工事高として認め、経営事項審査(経審)で評価できるよう特例措置を講じる。施工途中で滅失した部分の工事の損害はそれまでの出来高に応じて発注者が負担しているが、企業会計上は被災後に残った出来高(滅失部分を除く)しか完工高に組み入れることができず、経審の評価でも同様の取り扱いとなっている。特例では滅失分も含めた出来高を完工高として経審で評価できるようにする。同省は18日付で国や自治体などの関係機関に特例措置を適切に講じるよう要請する通知を出した。
 
 
 経審は、公共工事を受注する建設業者に建設業法で受審が義務付けられており、経営状況などの客観事項を数値化して企業を評価する。完成工事高は審査項目の大きな柱の一つで、通常は出来高部分を完工高として評価する。ただ、震災の被災地では工事途中で構造物が流されるなどの被害が続出。経審で完工高を評価する場合、流されずに残った出来高部分しか評価できず、滅失部分は評価の対象外となる。国交省は、このままでは経審に基づく入札ランクにも変動が生じ、企業経営に大きな悪影響が出かねないと判断。評価の特例措置を講じることを決めた。
 
 
 特例の対象となる工事は、大震災で災害救助法が適用された市町村区域で被害を受けた公共工事のうち、元請建設会社に対して発注者による支払いが既に行われた案件。被災後に残った出来高部分と、滅失した部分を合わせて経審での完工高の評価対象とする。例えば、1億円の工事を受注し、震災前までに8000万円部分まで施工が終わっていたが、津波で7000万円分が流され、1000万円分しか出来高が残っていない場合、8000万円分相当が完工高として認められる。
 
 
 元請建設会社が経審の完工高評価に滅失部分を付加しようとする場合、申請の際に発注者からの損害の認定通知書の写しの提出を求める。自治体などへの通知では、工事進行基準を導入して過年度に完工高として計上している出来高相当額がある場合には二重評価をしないよう留意することも明記した。

日刊建設工業新聞の購読申し込みは、こちら

戻る