2013/01/09 国交省/技術者確保へ兼任要件の緩和検討/大型補正予算円滑執行に向け

【建設工業新聞 1月 9日 記事掲載】

 国土交通省は、政府が検討中の公共事業を中心とした12年度補正予算を円滑に執行するため、全国で不足が懸念される建設技術者や技能者の確保策の検討に入った。公共事業の中心となる土木工事の技術者らは長年にわたる公共事業費大幅削減の影響で減少。このため、東日本大震災の被災地の復興工事に適用している主任技術者の兼任要件緩和を柱に対策を検討する。
 
 
 政府は15日に12年度補正予算案を閣議決定し、1月末召集の通常国会で2月中に成立させることを目指す。国交省は技術者確保の支援策について予算成立後に直ちに打ち出す考えだ。補正予算の規模は、地方負担分などを含む事業費の総額で20兆円を超える見通しで、国の財政支出は13・1兆円程度を想定。景気への即効性が高い道路やトンネルなどの改修・補修、点検といった公共事業に予算を重点配分する。事業執行で課題になるのが、数兆円規模となる公共事業費を受けて国や地方自治体が発注する工事を請け負う建設会社が抱える技術者などの数だ。
 
 
 国の公共事業関係費(当初予算)は10年前まで9兆円程度で推移していたが、12年度は4・6兆円とほぼ半減。大幅な予算削減に伴い、建設会社の多くは土木技術者などを大きく減らしている。ある大手ゼネコンの関係者は「公共事業が増えるといっても、これまでの工事量激減の中で技術者の多くを解雇しており、人材がいない」と言う。今回の補正予算での公共事業の中心は既設インフラの維持・補修などで人手がより多くかかるとの指摘もある。補正予算成立後、国や自治体から一斉に工事の発注が始まる。人手不足の混乱を回避するため国交省は、震災の被災3県(岩手、宮城、福島)などが発注する工事で行っている主任技術者の兼任要件緩和を中心に人材確保の支援策を検討する。
 
 
 建設業法は、重要な工事現場ごとに主任技術者を専任配置することを定めているが、被災地では同時・集中的に工事が行われることを考慮。対象となる工作物に一体性や連続性があり、現場が5キロ程度の範囲内にある場合は2カ所程度まで兼任を認めている。これと同様の対策を検討する。定年退職した技術者の再雇用などを後押しする対策も検討課題。国交省によると、OB技術者の再雇用などを検討し始めた企業もあるという。

日刊建設工業新聞の購読申し込みは、こちら

戻る