2013/04/16 労務単価引き上げ-試される業界の対応力/賃金への反映、次回調査で判明

【建設工業新聞 4月 16日 記事掲載】

 公共工事の積算に用いる公共工事設計労務単価が13年度、過去最大幅で引き上げられたのを受け、建設業界で技能労働者の処遇改善機運が高まっている。「国がここまで踏み込んだ以上、業界も応えなければ」との声が業界関係者から上がる。一方、工事価格は民間工事の動向にも大きく左右されるため、賃金をどこまで上げられるか不安視する向きもある。処遇改善が今できなければ、労働者の建設業界離れがさらに進むのは必至。業界全体の対応力が試される。
 
 
 「設計労務単価の大幅な改善はありがたい」。全国建設業協会(全建)の淺沼健一会長は、国土交通、農林水産両省が3月末に発表した13年度の設計労務単価を歓迎する意向を表明した。13年度の労務単価には、実勢価格の上昇分に加え、社会保険加入に必要な法定福利費相当額(社会保険料の本人負担分)といった政策的配慮による引き上げ分が盛り込まれた。業界側には「国交省の英断であり、大きな一歩」「上昇分が技能労働者に支払われるよう元請けが強く指導しなければならない」と受け止める声が広がった。
 
 
 問題は、せっかく引き上げられた労務単価が工事の受注価格にきちんと反映され、引き上げ分が実際に労働者の賃金にまで行き渡るかどうかだ。現実には課題も多い。設計労務単価が引き上げられれば、公共工事の入札では予定価格も上昇するが、ダンピング入札が横行するような事態が起きれば受注価格は上がらない。そうなると末端の技能労働者の賃金も据え置かれたままになりかねない。「民間の工事発注者も(発注単価を)改善しなければ、対応は容易ではない」(業界関係者)といった声も強い。
 
 
 毎年度の設計労務単価は、前年秋に行う公共工事の労務費調査のデータを基礎に決められる。今回の単価引き上げの効果が実際の労務費の数字として出てくるのは今秋の労務費調査。過当競争で受注価格が下がり、技能労働者にしわ寄せがいくという悪循環が繰り返されてきた建設業界が、「国が十分な労務単価を払っているから、民間や地方自治体も払ってほしい」と訴えられるような好循環へと転換できるのかどうか。国交省は「本格的な政策誘導ができる最後のチャンス」として、業界が「結果」を出すことを求めている。

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