2013/08/06 14年度予算要求-公共事業費確保へ正念場/雇用・防災に中長期見通し不可欠

【建設工業新聞 8月 6日 記事掲載】

国の14年度予算編成に向けた動きが本格化する中、当初予算での公共事業費の削減を懸念する声が建設業界から上がっている。業界内には「当初予算での公共事業費の乱高下が産業にゆがみを与えた一番の要因」との声が根強い。公共事業の先行き不透明感が技術者や技能者の雇用・育成を困難にし、地域経済にも悪影響を及ぼしてきたとの認識だ。与党圧勝の参院選を経た政権安定を追い風に、当初予算での公共事業費確保を訴える声があらためて強まりそうだ。

政府は週内に14年度予算の概算要求基準を閣議了解する予定。国債費や義務的経費を除いた裁量的経費は、13年度当初予算(13・2兆円)から1割削減とする方向で、ここに公共事業費も含まれる。一方で、成長戦略関連分野に充当する3兆円超の特別要求枠も設ける。年末の予算案編成に向けては、削減分の取り扱いと特別要求枠の獲得が焦点となる。ある建設業界団体のトップは、「公共事業の中長期的なビジョンを示し、当初予算を確保することが建設産業にとっては最も重要だ」と強調する。公共事業が将来、どの程度の予算規模になるのか、その動向が見通せないことが、各企業による若年層の雇用にブレーキをかけ、東日本大震災後の技術者・技能労働者不足へとつながったとの思いがあるからだ。

震災の復旧・復興事業や全国での防災対策の強化を背景に公共事業費はようやく下げ止まった。技能者不足を背景に、国土交通省が13年度の公共工事設計労務単価を大幅に引き上げたこともあって、将来を見据えて若手を採用する地域建設業者も出てきた。公共事業費がここで再び急減することにでもなれば、せっかくの「負のスパイラル」からの脱却の動きに水を差すことになりかねない。「公共事業費が安定するのかどうか、皆が様子見をしている。予算がまた減るようでは、若手の採用は厳しい」。ある地域建設業者のトップはそう指摘する。

補正予算に頼っていては防災インフラの整備はスムーズには進まない。予算が急増・急減すると、災害対応の最前線に立つ地域建設業者が必要な重機を安定して保有することもできなくなる。業界関係者からは「地域の防災対応力の低下は国民生活に波及する。公共事業を(予算削減で)狙い打ちするようなことはあってはならない」との声が上がる。

日刊建設工業新聞の購読申し込みは、こちら

戻る