2013/11/6 誇り持てる産業へ-全建ブロック会議を振り返る・中/14年度当初予算が試金石

【建設工業新聞 11月 6日 1面記事掲載】

◇業界の使命は安全・安心確保
「中長期の将来を見通すには、14年度予算をしっかりと確保することが必要だ。縮減のベクトルが変わったと実感できる予算になるよう、業界と共に努力していきたい」。国土交通省の吉田光市建設流通政策審議官は、各地区の会合でそう訴えた。従来のデフレスパイラルを逆回転させるスパイラルアップが今こそ重要という考え方だ。国交省側の参加者からは、各地区の会議を通じて同様の発言が繰り返された。

全国建設業協会(全建)の淺沼健一会長も、「建設業が国民の安全・安心・快適を守る役割を果たし続けることは、建設産業を健全化することと表裏一体だ。そのために安定的な当初予算を確保してほしい」と国交省に繰り返し要請した。官民のベクトルは完全に一致している。

こうした発言は、14年度予算の編成へ向けて両者の危機感が高まっていることの裏返しでもある。「『(人手不足で入札が)不調不落になるほど発注しているのだから、これ以上の公共工事はいらない』と口から出任せのような風評が流れている」。国交省の森昌文官房技術審議官は公共事業予算をめぐる現状に強い懸念を示し、根拠のない風評が必要な予算獲得の足かせにならないよう、入札契約制度など全般的な課題解決に取り組む方針を表明した。

東日本大震災から来年3月で3年。今は、発生から5年間とされる集中復興期間のちょうど折り返し点に当たる。東北地区の会合では、予算の復興枠拡大や、現場目線からの使い勝手の良い執行方法を求める声が上がった。

東北建設業協会連合会(東北建協連)の佐藤博俊会長は、「東北の復興は今後の大規模災害対応のモデルになる。今後も、官民で英知を出して復興にまい進したい」と強調。さらに、開催が決まった2020年東京五輪にも言及し、「復興を見事に成し遂げ、国土強靱(きょうじん)化により安全・安心・快適な環境を提供してこそ、世界中のお客さまをお迎えできる」と全国的な国土強靱化の重要性も指摘した。

会合後、淺沼会長は「東北の復興無くして五輪の成功はない」と言い切り、建設産業として復興に全力を挙げる考えをあらためて表明した。

「われわれの存在意義とは何か。安全・安心を守ることが使命だ」(前川容洋兵庫建協会長)。業界には今、自らの役割に対するそうした強い意識が広がっている。着実なインフラ整備が自然災害の被害を抑える成果も各地で上がっている。

北陸地区の会合で木村邦久北陸地方整備局企画部長は、7月末に北陸を襲った豪雨を例に「堤防整備のおかげで金沢では基本高水まで1センチのところで水位上昇が止まり、ひどい被害は出なかった。そういったことをしっかりと広報し、インフラ整備の意義を理解してもらう工夫をしていく」と語った。

建設業が国民の期待に応えるためには人が欠かせない。だからこそ、技能労働者の処遇改善が不可欠であり、そのためには建設業者が将来を見通すことができる安定的な公共事業予算が求められる。今は、予算と人材の好循環を実現できるかどうかの分岐点にある。

日刊建設工業新聞の購読申し込みは、こちら

戻る