2013/12/26 ”普及”から”利活用”へ 第二期推進プログラムを報告(国交省 情報化施工推進会議)

国土交通省は12月25日 情報化施工推進会議を開催し、第二期情報化施工推進戦略に
基づくプログラムについて議論を行った。


立命館大学 理工学部教授
建山和由委員長

会議の冒頭、第14回会議で報告された、中部地方整備局での推進的な取組に関し、
H23年度以降、施工者希望型によりH23年度より「TSによる出来形管理」を総合評価
加点対象として導入。
H24年度には「MC技術(モータグレーダ)」も対象とし、価格以外点数で最大4点の
加点とされた経緯について報告された。

つづいて、各情報化技術のH25年9月までの活用率が報告され、今年度より1万m3以上の
土工事で一般化技術(必須)となった「TS出来形技術」については、485件の発注済
工事のうち360件の工事での活用にとどまり、活用率は74%。
一般化推進技術についても、
   ・TS出来形(1万m3未満の土工事)
   ・マシンコントロール(モータグレーダ)技術(以下MC)
   ・TS・GNSS締固め技術
の活用率は比較的高いものの、その他のMC/MG技術等については普及が進んでいない
ことが報告された。



情報化施工技術の活用率(情報化施工技術別)

現在の活用状況をふまえ、情報化施工技術の”普及”から”利活用”に向けた今後の
取組として、国交省より第二期プログラムの推進方法として、5つの重点目標に対し、
10項目の取組案が提示された。

目標① 情報化施工に関連するデータの利活用に関する重点項目
取組1: 情報化施工による施工管理要領、監督・検査要領の整備
取組2: 情報化施工の定量的な評価の実施
取組3: 技術基準類(設計・施工)の整備
取組4: CIM(Construction Information Modeling)と連携したデータ共有手法の作成

目標② 新たに普及を推進する技術・工種の拡大に関する重点目標
取組5: 新たな技術や既存の技術を導入し普及する仕組み作り

目標③ 情報化施工の普及拡大に関する重点目標
取組6: 一般化及び実用化の推進
取組7: ユーザが容易に調達できる環境の整備

目標④ 地方公共団体への展開に関する重点目標
取組8: 情報発信の強化
取組9: 情報化施工の導入現場の公開や、支援の充実

目標⑤ 情報化施工に関する教育・教習の充実に関する重点目標

このうち、【目標①情報化施工に関連するデータの利活用に関する重点項目】では、
今後の技術拡大・工種拡大に併せた要領整備が盛り込まれた。


【取組3:技術基準類(設計・施工)の整備】では、現在、一般化推進技術として
運用される「TS・GNSSを用いた締固め要領、監督・検査要領」について、
「盛土締固め層数」「盛土締固め層厚」等の品質管理情報まで拡大する改定案や、
「TS出来形管理におけるノンプリズム方式の適用」、高さ誤差補正機能を有する
「RTK-GNSS」を利用する場合の要領(案)の策定が盛り込まれた。

「TS・GNSSを用いた締固め要領、監督・検査要領」の改訂について


「TS出来形管理におけるノンプリズム方式の適用」について


「RTK-GNSSを利用する場合の要領(案)」について


さらに、MC施工用設計データや施工時の機械位置情報等を活用することにより、
従来の「定点管理」から「近傍観測管理」「代表点管理」等、面的な品質管理方法の
導入についても取組課題として提示されたほか、
【取組4:CIMと連携したデータ共有手法の作成】では、河川護岸・道路埋設物等の
一元管理により、維持管理段階への活用も取組課題として報告。
【取組6:一般化及び実用化の推進】では、除雪業務において従来はオペレーターの
習熟度に依存することが多い縁石位置や投雪禁止箇所等の情報を、一元管理することに
より、熟練オペレーターの除雪を機械的に可能にする除雪車ICTの開発・導入など、
”普及”から”利活用”にむけた具体的な取組内容が多く報告された。

CIMと連携したデータ共有手法の例


今回の第二期推進プログラムについて委員からは、

・情報化施工の利点は、「2人でやっていたことが1人でできる」とか「2台分の作業を
1台でできる」といった状況になって初めて気がつく。
人も機械も不足している現在の状況下では、そういった「足りないものを補っていく」
ものが重要視されるはずだ。 

・情報化施工技術は、管理の簡素化、書類の簡略化等、施工の場面以外でも得られるものが
大きい。
”必要だ”ということがないと普及していかない。技術導入による負担ばかりではなく、
意義があるという発注者からの意味付けが重要だ。

・現状では、情報化施工を行いながら、従来の施工にあわせた管理を求められることが
あり、現場の効率が低下している。
管理要領等の早期策定を是非お願いしたい。

・情報化施工が普及しても従来の品質管理基準がそのままで、あまり意味がないような
ことも起きている。
たとえば、盛土まき出し厚管理については、情報化施工を適用した場合でも従来の規格値が
採用される。
まき出し厚の誤差は累積することがなく、全体に与える影響は小さいため、規格値に幅を
持たせてもよいのでは?

・新しい機械や技術の導入により、施工のブラックボックス化がさらに進む懸念がある。
測器や建機等の使い方については充分な教育訓練体制構築が望まれる。

・(除雪業務について)機械任せだけでなくオペレーターの技量評価制度を設けて、
やる気を引き出す施策も必要ではないか?

・学との連携。学生の認知度が低いことも問題。授業の中で取り入れてもらう等の
働きかけも必要ではないか?

・プログラムの具現化にあたり、H26年度の負担が大きく見える。ブレイクダウンして
本当に実現可能なのか、検証が必要ではないか?
優先順位をつけてもらったほうが良いのでは?

といった意見が寄せらた。
国交省は今回寄せられた意見をもとに全体を整理したうえで、次年度の方針を策定する。

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