2014/11/18 地元業者受注確保法-衆院解散で廃案へ/自民提案、13年から継続も審議なく

【建設工業新聞 11月 18日 1面記事掲載】

自民党が単独で国会に議員提案していた「国等が行う公共工事についての地元建設業者の受注の確保等に関する法律案」が廃案になる見通しとなった。工事場所の市町村に本店を置く地元業者の受注機会を増やすことを目的に13年の通常国会中に提出され、衆院国土交通委員会に付託されたまま一度も審議されていない状態が続いていた。安倍晋三首相が18日にも衆院の解散を表明するとみられることから、自動的に廃案となる。

同法案は、衛藤征士郎衆院議員らが13年6月20日付で国会に提出。当初は提出者に6人が名を連ねていたが、閣僚就任などに伴い提出者名簿から外れ、現在は、衛藤氏と高村正彦副総裁、野田聖子前総務会長の計3人が提出者となっている。

法案では、国や独立行政法人などが発注する予定価格1億円以下の工事について、施工場所の市町村区域内に本店がある地元建設業者の受注機会増大に配慮することを規定している。こうした工事を発注する場合は、都道府県の境界付近にあるような場合を除き、地元建設業者を契約の相手方とする努力義務を課す。工事の元請受注者も、地元の建設業者と下請契約を締結し、資機材を地元業者から購入するよう努めることも定めている。

法案提出に当たって衛藤氏は日刊建設工業新聞の取材に対し、同法案の対象となる工事では一般競争のようなオープンな形の入札ではなく、「5社なり、10社なりを指名するようになるだろう」との見方を示し、地元業者の育成と地域経済の活性化につなげたいとしていた。ただ、建設業界からは、「本店所在地の市町村によって受注機会の不均衡が生じる可能性もあるのではないか」(函館建設業協会)などと、同法案が実際に運用された場合に考えられる問題を懸念する声も上がっていた。

国会で同法案はこれまで継続審議扱いになっていたが、同じ与党の公明党や、野党各党との調整も行われていないことから、実質審議を行わない「委員長提案」に持ち込んで早期成立を目指すのは事実上不可能。現時点でまだ法案の趣旨説明も行われていない。安倍首相は18日にも衆院の解散を表明するとみられており、この臨時国会で衆院が解散することになれば、同法案は自動的に廃案となる。

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