2015/02/20 地元業者受注確保法案-再提出の動きに業界不安/国発注工事に「市町村本店」規定

【建設工業新聞 2月 20日 1面記事掲載】

昨年の衆院解散で廃案になった議員提案の「地元建設業者受注確保法案」が再提出される動きが表面化し、地域建設業界に不安が広がっている。同法案は、国などが発注する1億円以下の公共工事で地元業者の受注機会を増やすよう配慮するのが趣旨で、「国直轄の道路や河川がないエリアの業者の仕事がなくなる」(業界団体幹部)と懸念する声が上がっている。

法案は自民党が単独で13年6月に国会へ提出。衆院国土交通委員会に付託されたまま一度も審議されず、昨年11月21日の衆院解散で自動的に廃案になったが、今国会に再提出する動きがある。国や独立行政法人などが発注する予定価格1億円以下の工事を対象に、施工場所の市町村内に本店がある業者の受注機会増大に配慮することが法案の柱。元請受注者が地元業者との下請契約や地元業者からの資機材購入に努めることも定める。

受注者を特定地域に限ることにつながりかねないこうした規定が全国一律で運用されれば、どこに本店があるかで仕事の量に大きな差が出てしまうと懸念する声が多い。地域で活動する建設会社からは「これまで技術者を確保・育成し、技術力を蓄積してきた。営業戦略を変えなければならなくなる」と警戒する声が上がる。

国土交通省の直轄工事では、予定価格3億円未満の工事が事務所発注の「分任官契約」となり、地域の業者が受注可能。入札では地元業者への加点措置もある。だが新たな法案ができれば、入札参加エリアが狭まり、適正な競争環境が保持されなくなる恐れもある。技術力のないペーパーカンパニーを助長し、違法な「上請・丸投げ」につながりかねないとの懸念も出ている。

改正公共工事品質確保促進法(公共工事品確法)に基づく発注者共通ルールとして先に決まった「運用指針」では、地域の社会資本を支える企業を確保するため「工事の性格、地域の実情等を踏まえ、必要に応じて災害時の工事実施体制の確保の状況等を考慮するなど、競争性の確保に留意しつつ、適切な競争参加資格を設定する」と定めた。新法案より、改正公共工事品確法の運用を優先するべきだとの声も強まっている。

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