2015/11/20 都道府県版地方創生戦略/相次ぎ建設業担い手確保・育成策/インフラ整備・維持背景に

【建設工業新聞 11月 20日 1面記事掲載】

地方自治体が、「地方創生」を目指して策定する「まち・ひと・しごと創生総合戦略」で、地元建設業の担い手確保・育成策を相次ぎ打ち出している。人口が減少する中でも、地域経済の成長や防災・減災などに貢献する社会資本整備を着実に進められるようにするのが狙いだ。多くの県が建設業への若者の入職促進に向けた業界団体や学校との連携強化を打ち出しており、地域の課題に対応した独自の取り組みも目立つ。

まち・ひと・しごと創生法に基づいて総合戦略を策定したのは、10月末時点で38都道府県。このうち、▽岩手▽山形▽秋田▽茨城▽長野▽静岡▽愛知▽新潟▽石川▽富山▽岐阜▽和歌山▽兵庫▽鳥取▽島根▽山口▽香川▽徳島▽長崎▽大分▽熊本▽宮崎▽沖縄-の23県が、建設業に特化した担い手確保・育成策を盛り込んでいる。

それらの多くは、建設業への学生の就職を支援するため、地元の建設業団体や大学・高校との相互連携を強化。団体による学校訪問や地元業者へのインターンシップに取り組んでいくことを打ち出している。就業者の資格取得に対する支援策も目立つ。

それぞれの地方ならではの課題に対応する建設業の担い手確保・育成策もある。山形県は15年度から、県内企業で正社員として働く39歳以下の若手とすべての女性を対象に、コンクリートミキサー車など大型車両の運転免許取得にかかる費用を1人当たり最大8万円補助する事業を開始した。

県は「県内の建設業は離職者が多いが、建設現場や除排雪のオペレーターを着実に確保していく必要がある。免許を取得することでやりがいも持ってもらいたい」(県土整備部建設企画課)としている。

和歌山県は、県が発注する建設工事で県内業者が受注する割合(件数ベース)を98%とする高い目標を設定。併せて、主任技術者に占める若手・女性の割合を19年度までに現在の10%から15%へと引き上げるため、建設業関連学科の新卒者や女性の雇用を入札参加資格審査で加点評価する取り組みを進めることを打ち出した。

熊本県は、県内業者の経営力向上と不良不適格業者の排除を両立させるため、企業合併や新分野への進出などを促す金融支援を行う。

総合戦略を策定した大半の県は、国の社会資本整備重点計画や国土形成計画、国土強靱(きょうじん)化行動計画などに沿って道路などの社会資本の新規整備や戦略的な維持更新を重点施策に掲げている。こうした施策を実行するためには地域建設業の存在が不可欠のため、担い手の確保・育成策を併せて打ち出す県が多いとみられる。

政府によると、10月末までに総合戦略を策定していない9府県のうち、福島、埼玉、山梨、奈良、福岡の5県は年内、群馬、神奈川、大阪、鹿児島の4府県も来年3月末までの策定を予定している。市区町村でも、栃木県内と東京都内の計3団体以外はすべて来年3月までに策定を終える予定だ。

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