2016/05/06 日建連/生産性向上推進要綱決定/3分野の施策列挙、技能者の尊厳取り戻す

【建設工業新聞 5月 2日 1面記事掲載】

日本建設業連合会(日建連、中村満義会長)は4月28日の理事会で、「産業構造と生産方式」「土木」「建築」の3分野についての生産性向上の取り組みをまとめた「生産性向上推進要綱」を決めた。生産性向上のアクションプランに位置付け、分野ごとに複数の施策を列挙。「技能者の尊厳を取り戻す」と明記し、生産性向上によって生産力の維持・増強と同時に技能者の処遇改善を推進する方針も強く打ち出した。対象期間は5年。発注者、設計・コンサルタント、メーカーに協力を求める。=2面に関連記事

小原好一前田建設代表取締役会長を本部長とする「生産性向上推進本部」を設置し、課題整理と施策検討を進めてきた。要綱は、生産性向上について「競争に勝つために各社が自助努力で実行すべきもの」としつつ、日建連が掲げる新規入職者と生産性向上の目標(技能者90万人確保と35万人相当の労働力工面)を達成できなければ、「供給力がショートする」と危機感を表明。生産体制の堅持と適正価格でのサービス提供が建設業の責務だとして、業界全体で生産性向上に取り組むことの重要性をにじませ、「目先のコスト比較を超えた取り組み」を求めた。

各分野のうち、産業構造と生産方式では、重層下請構造が技能者の処遇悪化や下請業者と技能者の疲弊の一因になっていると指摘。「可能な分野で原則2次(設備は3次)下請まで」とする目標の一般化が必要だとした。重層構造是正に向けて「グループ力の強化」を提案。手戻りの削減や作業の平準化のために、技能者の「専属度」を高め、グループを意識した施工を行うことを提唱した。ダンピング受注の排除と計画的な受注も求めた。

構造物の仕様や材料、施工ツールなどの規格化・標準化の効果にも着目し、関係機関に提案・要請を積極的に行う。

土木では、国土交通省が進める生産性向上施策「i-Construction」に呼応し、コンクリート工の効率化やICT(情報通信技術)の活用を推進。5年程度でプレキャスト(PCa)工法の導入拡大(設計変更の簡略化、新しい契約方式の活用など)、各社1現場以上で施工CIM・ICTの活用、不要な書類の一掃などを目指す。工期設定や工程情報の開示が進めば「週休2日」を工程の原則にする目標も盛り込んだ。

建築では、設計作業の効率化やPCa化を進め、省人化に関する5年後の目標も別途検討する。当初の5年で会員企業全社で施工BIMを利用。発注者の選択肢の拡大(設計・施工一貫など)、適正工期算定プログラムの機能強化などを進める。

生産性向上推進要綱の概要は次の通り。

【趣旨】
△産業構造と生産方式、土木分野、建築分野の生産性向上アクションプラン
△新規入職者の不足を生産性向上でカバーしなければ生産体制が破綻
△省人化の効果を評価
△適用期間は16年度からの5年

【産業構造と生産方式】
△「グループ力の強化」を提唱。技能者までの専属度を高め、グループとして施工する方式に回帰すべき
△賃金水準の確保、社会保険加入、民間工事での建設業退職金共済制度の適用促進、4週8休の拡大、社員化による雇用の安定、重層下請構造の改善という「技能者の処遇改善」
△専門工事業者に対する社員化目標の設定促進
△建設キャリアアップシステムの普及促進
△多能工の育成支援
△仕様、部材、手順などの規格化・標準化
△価格と工期のダンピング受注排除

【土木】
△現場打ちコンクリート工の効率化
△プレキャスト導入促進
△ICTの積極的な導入
△書類の削減による業務の効率化
△適切な工期設定、施工条件の明示、工程管理情報の開示に関する検討
△原則週休2日を前提とした工程作成

【建築】
△構造断面の均等化など設計の造り込み
△プレキャストなど工場生産による現場作業の削減
△無足場化など仮設を減らす省人化
△作業の標準化・自動化・機械化の推進
△施工BIM・ICTの活用促進
△設計・施工一貫方式の普及促進
△適正工期算定プログラムの活用。

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