2016/10/12 国交省/建設産業政策会議が初会合/10年度見据え議論、関係者の役割再確認

【建設工業新聞 10月 12日 1面記事掲載】

国土交通省は、建設産業の10年後を見据えた政策の議論を始めた。産業の将来や建設業関連制度の基本的な枠組みを検討するために設置した有識者会議「建設産業政策会議」の初会合を11日に東京都内で開催。10年後も建設産業が「生産性」を高めながら「現場力」を維持できるよう、制定から約70年が経過した建設業法の改正も視野に、関連制度の基本的枠組みの検討を進める。産業政策について幅広く議論し、17年6月ごろに成果をまとめる。=2面に関連記事

同会議の委員は、建設関連9団体の関係者10人と、業界内外の学識経験者14人の計24人で構成。座長には石原邦夫東京海上日動火災保険相談役、座長代理には大森文彦東洋大法学部教授(弁護士)が就任した。

冒頭、末松信介副大臣は「建設業は屋外の仕事が多く、若い人たちが入ってこない。今後AI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)などの新しい技術をどう取り入れ、若者たちにとって魅力ある職場にするか。10年後を見据え、担い手の確保や地域産業の育成、生産性の向上などさまざまな課題について審議していただきたい」と要請した。

国交省は建設産業を取り巻く現状と課題や、建設産業に関する諸制度などを説明。建設投資が10年度以降増加に転じ、建設業の利益率も改善傾向にあるが、学識者の委員は「企業規模別の営業利益率を見ると、大企業(資本金10億円以上)は約6%、中小(1億円未満)は約3%と格差が大きい。大企業、中堅、中小と分けて産業全体で何が起きているのかを議論する必要があると考えている」と述べた。

産業施策を幅広く議論するとともに、個別テーマの議論を深めていくことを求める意見も多く上がった。さらに点(個別テーマ)をつなげ、面にすることの重要性を指摘する意見も出た。業界外の委員からは、国交省が進める建設現場の生産性向上策「i-Construction」を取り上げ、「データベースの標準化や技能労働者の処遇改善、インフラ輸出などの点を面にするテスト的プロジェクトとして生かしてみてはどうか」との提案も出た。

大森座長代理は「誰のための産業なのか、何のための産業なのかを長期的な視点で議論することが必要。建設産業の関係者の役割を再チェックすることでいろんな問題が出てくる」と指摘した。

《今後の議論のポイント(案)》

△人口減少や高齢化、AIやIoTなどのイノベーションの進展を受け、10年後の建設市場はどのようになっているか
△確実に到来する労働力人口の減少を見据え、建設業の担い手確保にどのように取り組むべきか
△他産業との比較も踏まえ、建設産業は生産性向上や働き方改革にどのように取り組むべきか
△建設業に関連する制度の基本的枠組みをどのように評価し、どう再検討すべきか

【各論の例】

△AI化、IoT化が進んだ場合の施工の現場を踏まえ、技術者の配置などの規制はいかにあるべきか
△昭和世代とは労働観の違う若者の入職・定着を図るためには、労働環境・条件をどう整えるべきか
△後継者難や規模縮小が懸念される地方建設企業が、今後も「地域の守り手」として活躍し続けるためにはどのような環境整備が有効か
△消費者の安全・安心のニーズの高まりに対応して、工事の品質確保のためにどのような施策を講じるべきか
△民間工事の分野で、生産性の向上、労働環境の改善、関係者の協力体制の構築などにどのように取り組むべきか
△生産性の向上や働き方の改善に積極的に取り組む企業をどう評価すべきか
△建設企業がCM(コンストラクション・マネジメント)など請負工事の外にある仕事も含めて事業を行うようになる場合の契約制度や許可制度はいかにあるべきか
△今後技術職員の不足等が見込まれる中、いかにして効率的かつ持続的な発注制度を構築し、普及させていくか。

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