2016/10/13 国交省/社保未加入立ち入り検査本格化/民間建築対象、内訳明示見積書の活用指導

【建設工業新聞 10月 13日 1面記事掲載】

国土交通省は、建設業の社会保険未加入対策の一環として、法定福利費を内訳明示した見積書の活用状況に関する立ち入り検査を本格化させる。下請企業、労働者に法定福利費を行き渡らせることで加入促進につなげるのが目的。主に民間建築工事を対象に全国10の地域ブロックすべてで実施する。国交省が社会保険加入に特化した立ち入り検査を行うのは初めてで、「一過性ではなく次年度以降も継続する必要がある」(建設業課)としている。

国交省が策定した「社会保険の加入に関する下請指導ガイドライン」には、元請企業が内訳明示の見積書を提出するよう下請企業に働き掛けることや、提出された内訳明示見積書を尊重して下請負契約を締結することが明記されている。1次下請企業には、内訳明示の見積書を提出し、雇用する労働者や2次下請の法定福利費を確保するよう求めている。

国交省はすべての下請企業と労働者に必要な法定福利費を行き渡らせるルールが具体的に動いているかどうかを確認し、その効果を高めていくため、許可部局による立ち入り検査を始めた。

出先の10機関(全地方整備局と北海道開発局、沖縄総合事務局)を通じて元請業者にアンケートを行い、その結果に基づき立ち入り対象の現場を選定。まずは内訳明示の見積書を活用している現場に立ち入り、現場や企業の取り組みや工夫を確認するとともに、優れた事例として収集。他の現場や企業に紹介して今後の未加入対策に役立ててもらう。

9月末時点で、10機関のうち6機関が約50現場で立ち入り検査を実施。元請業者からは「直接契約していない2次以下の下請は指導しづらい」「下請が法定福利費を算定できない」「民間発注者が社会保険未加入対策を理解していない」などの意見が寄せられた。

今後は10機関すべてで立ち入り検査を行う。立ち入る現場の数は未定だが、内訳明示見積書の活用が進む現場だけでなく、アンケートの回答内容が思わしくない現場も対象にする。元請から下請への内訳明示見積書活用の働き掛けや、下請から提出された見積書の尊重などの状況を確認。未加入対策を実施していない場合は、いつまでに取り組むか目標を決めるよう指導する。

「建設業取引適正化推進月間」(11月1~30日)に、都道府県と連携して行う下請取引に関する立ち入り検査で社会保険加入状況などの確認も併せて実施する。建設業者などを対象にした講習会でも社会保険加入の下請指導ガイドラインを重点的に周知する。

国交省は社会保険加入の目標として「17年度をめどに許可業者単位で100%、労働者単位で製造業並み」を設定。期限まで半年を切り、依然低い加入率にとどまっている2次以下や都市部の下請業者に対する取り組みを柱に未加入対策の強化を打ち出している。

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