2017/08/31 働き方改革へー業界団体の対応活発化/焦点は適正工期/日建連は4点セット提示へ

【建設工業新聞 8月 31日 1面記事掲載】

適正工期を設定するためのガイドラインを政府の関係省庁連絡会議が申し合わせ、建設業の働き方改革を巡る関係団体の対応が一段と活発化するとともに、さまざまな意見が出始めた。日本建設業連合会(日建連)や全国建設業協会(全建)は、新しい取り組みの最終調整に入った。「働き方改革の焦点の一つ」(元請関係団体幹部)として適正な工期のあり方を追求する構えを見せる動きも広がりつつある。

ガイドラインは、政府の「建設業の働き方改革に関する関係省庁連絡会議」が28日に首相官邸で開いた会合で決定。「適正な工期」での請負契約の締結が民間を含めた発注者の役割だとうたい、受注者には「工期のダンピングは行わない」ことなどを求めた。

建設関係団体は政府の取り組みを受け、対応を急いでいる。日建連は9月22日の理事会で、労働時間を段階的に減らし、約7年後とされる時間外労働の罰則付き上限規制の導入に軟着陸できるよう、時間外労働の労使協定の目安とする「自主規制」を決める。

週休2日の定着に向けた「素案」、働き方改革全般の取り組み姿勢をまとめる「基本方針」、さらに賃金の改善を会員企業に改めて促す措置も合わせた「働き方改革関連4点セット」を打ち出す方針だ。全建は、9月にまとめる「働き方改革行動憲章(仮称)」に地域建設業界が目指す働き方の方向性として「週休2日」を盛り込む方針を固めた。

「官邸が工期を働き方改革の焦点にした」。元請関係団体のある幹部は、ガイドラインをそう受け止める。建設投資に占める割合の大きい民間工事には竣工期日にこだわる施主と、生産コストを考慮する施工側それぞれに、適正な工期が存在する。ただ施工側には受注のため施主に歩み寄らざるを得ないケースもある。「赤字でもしっかりした構造物を引き渡すだけと割り切れるが、工期の制約はきつい。品質に影響し、事故が起きるかもしれない。現場のプレッシャーは、予算より工期だ」。あるゼネコン関係者は工期の位置付けをそう指摘する。

ガイドラインの策定に謝意を示し、工期に関する施主のマインド変化を期待する施工者は少なくない。ただ資機材のリース料や施工班の手だてを考慮するなら、工期は長ければ長いほど良いとも言い切れない。「早期竣工という施主の期待に応えたい」(別のゼネコン関係者)という思いも根強く、ガイドラインを受け、「適正な工期」に折り合いを付ける受発注者の綱引きの行方が注目される。

業界内には「生産性のいっそうの向上が避けられない」(団体幹部)という認識も広がる。1カ月の時間外労働を巡る労使協定が100時間超の現場が存在する中、上限規制導入後は年間720時間などの制約が課される。「少ない人数や作業時間で生産力を維持できるようにしなければ、法律違反になる。産業としての競争力、魅力も低下する」(同)という強い危機感があるためだ。

担い手を確保するために休日も賃金も増やし、生産性を高め、手元に利益を残す-。「(ガイドラインができて)喜んでばかりはいられない」。元請関係団体の幹部はそう気を引き締めている。

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