2017/09/07 国交省/社保加入徹底・定着へ/地域単位で対策、キャリアアップシステム活用法検討

【建設工業新聞 9月 7日 1面記事掲載】

国土交通省は18年度、建設業の社会保険加入の徹底・定着に向けた取り組みを実施する。地域レベルでの定着を図るため都道府県ごとに加入推進の会議を開き、行動基準の採択や先進事例を共有。建設キャリアアップシステムを活用した加入把握の方法も検討する。小規模事業者の加入促進に向けた研修や相談支援を行う。18年度予算の概算要求で44百万円を計上した。

社会保険加入の取り組みを地域に根差したものにするため、国交省は17年度から都道府県単位で「社会保険加入推進会議」を順次立ち上げている。7月に全国に先駆けて愛知県で会議を開催。企業が社会保険加入に積極的に取り組むための行動基準を策定し、基準を順守する企業をリストアップして公表している。

国交省は年度内に各地方ブロックで1自治体の立ち上げを要請しており、18年度には全国展開を目指す。地域レベルでのきめ細かな取り組みを定着させていく考えだ。

来年秋の運用開始を目指す建設キャリアアップシステムには、技能者一人一人の経験や能力を業界統一ルールで蓄積する。登録情報で社会保険の加入状況が把握可能になることから、加入徹底に向けたシステムの利用方法を検討。関係者による議論の場を設ける予定でメンバーは今後詰める。

国交省が策定した「社会保険の加入に関する下請指導ガイドライン」には、加入状況の確認について作業員名簿を活用するよう明記されている。ガイドラインに盛り込むことも視野に、電子化されたデータを用いた合理的な確認方法を検討する予定だ。

小規模事業者や現場監督を対象に、社会保険に関する正しい理解の浸透を図るための研修を実施。これまでは下請となる中小建設業者を対象に、社会保険加入の原資となる法定福利費に特化したセミナーを全国で開催してきたが、18年度はターゲットをさらに絞り、社会保険全般に関するセミナーを行う。さらに小規模事業者向けの相談支援も実施。社会保険労務士など専門家が相談を受ける体制を整える。

技能労働者の処遇改善や公平な競争環境の実現に向け、国交省は12年度から建設業の社会保険加入対策を推進。16年10月時点の加入率(雇用保険、健康保険、厚生年金保険の3保険すべて)は、企業別では96%(11年10月84%)、労働者別で76%(57%)と一定の成果が見られるものの、小規模事業者・労働者単位の加入促進や、元請・下請間での法定福利費の確保といった課題もある。

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