2020/05/08 新型コロナウイルス/ゼネコン各社、割れる工事再開・中断の対応/緊急事態延長受け

【建設工業新聞  5月 8日 1面記事掲載】

新型コロナウイルスの緊急事態宣言が延長された中で、ゼネコン各社の対応が分かれている。清水建設や鹿島、戸田建設らは感染防止対策を強化した上で工事を再開。大林組やフジタ、東急建設らは発注者と協議し合意を得た工事を対象に、宣言期間中は施工中断を継続する。再開、中断延長とも課題があり、各社は難しい選択を迫られている。

清水建設は、社内の安全ルールなどを満たす管理体制が整った現場を対象に、関係者と協議した上で工事を順次再開する。再開に当たっては、現場作業員の入場前検温などを行うとともに、消毒専門作業員を全現場に配置する。同社は全国の現場の約85%に当たる500現場で工事を中断しており、月内の全現場再開を目指す。

鹿島は発注者と協議した上で現場を再開する方針だ。同社は当初から閉所期間を6日までとしていた。通勤時からのマスク常時着用や、入場前検温で37度以上の場合は現場入場を断るなど対策を強化する。現場への資機材納入会社にも感染予防の徹底を要請する。

戸田建設は3密(密閉・密集・密接)を避けた作業環境確保などを盛り込んだ対応指針を策定。対策が完了した現場から再開を発注者らと協議する。きめ細かな感染対策などにつなげるため「新型コロナウイルス対策室」も早期に設置するという。西松建設と奥村組も工事再開の方向だ。

閉所が長期化すれば、発注者の事業計画や現場作業員の雇用・収入に大きな影響を与えかねない。清水建設は「感染拡大防止対策を一層強化・徹底するとともに、雇用確保など経済活動の維持のために工事を進めることも重要」と判断理由を説明。鹿島や戸田建設も、建設産業の社会的使命や関係者への影響を勘案し再開にかじを切った。

一方で感染拡大への不安も依然としてある。あるゼネコンの担当者は「感染防止と現場作業員の生活維持などを両立するという重い課題を背負っての再開になる」と苦しい胸の内を明かす。

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