2020/10/20 財務省/財政審部会で社会資本整備の方向性提示/「量」より優先順位付け配分

【建設工業新聞  10月 20日 1面記事掲載】

財務省は19日の財政制度等審議会(財政審、財務相の諮問機関)財政制度分科会歳出改革部会で、今後の社会資本整備の基本的方向性を示した。「社会資本が概成しつつある」との認識の下、新規投資や老朽化に伴う維持更新コストの増加を避ける必要があると主張。足元で建設労働需給が逼迫(ひっぱく)し、今後労働力確保がさらに困難と想定。予算規模の量的拡大よりも優先順位を付けての配分を重点的に進める考えを示した。

同日の財政審部会で社会資本整備関係の2021年度予算編成に対する意見をまとめた資料を提出。その中で社会資本整備を取り巻く状況や、21年度予算での主な重点政策を提示した。社会資本整備に対しここ数年と同様、人口減少を理由に公共事業を量的に拡大させない考えを打ち出している。

公共事業を巡る現状を調査データに基づき紹介。公共事業の繰越額や建設業者の手持ち工事量の増加や、建設業の有効求人倍率が介護事業以上に高いといったデータを踏まえ、足元で建設労働需給が逼迫し、今後も労働力確保が難しいと指摘した。

こうした見方に対し、建設業の経営者は「施工を担う人材はおおむね確保できており、さらに生産性向上も進んでいる」と首をかしげる。確かに建設投資額はピーク時から3・3割減に対し、就業者数は2割減。手持ち工事量もここ数年、安定的に推移している。ICT(情報通信技術)施工の増加や施工時期の平準化など施工効率も向上しており、施工余力に問題はないようだ。

「社会資本が概成しつつある」との財務省の見解に、建設業界からは「激甚な自然災害が毎年発生し、人命や財産が奪われている。被害状況を見ると、社会資本が概成しているという見方はあり得ない」などの声が上がっている。防災・減災、国土強靱化の取り組みやインフラの老朽化対策の必要性を訴える。新型コロナウイルスの影響で民間投資が落ち込む中、「社会資本は国の発展の基盤。社会資本整備はコロナ禍でも前向きに動きだすエンジンになる」(建設業関係者)という。

財務省は21年度予算案の編成作業に関連し、主な重点政策として▽1人当たり維持更新コストの増加抑制▽ハード・ソフトが一体となった防災・減災対策▽コンパクト・プラス・ネットワークの推進▽生産性向上に向けた投資-の4点を挙げた。

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