2021/06/25 地域維持型契約方式、市区町村でなお1割/活用促進方策検討へ/国交省調査

【建設工業新聞  6月 25日 1面記事掲載】

既存インフラの維持管理を包括的な枠組みで発注する「地域維持型契約方式」の活用が、市区町村の1割程度にとどまっていることが分かった。国土交通省の調査によると、直近の活用状況は都道府県が47団体のうち23団体、市区町村は1721団体のうち251団体。関係者間の調整・連携や競争性の確保、受注者の負担増などに対する懸念が根強い。国交省は活用促進に向けた方策を検討する必要性を指摘している。

同方式はインフラの維持管理(災害応急対策、除雪、修繕、パトロールなど)を包括的な事業の契約単位(複数年契約や複数業務の一括発注)や、地域企業による包括的な施工体制(地域維持型JVや事業協同組合)で実施する。ロットの大型化による施工効率の向上、監理技術者の専任要件の緩和、人や機械の有効活用による施工体制の安定確保などの効果が期待できる。

公共工事入札契約適正化法(入契法)に基づく2020年度の実態調査によると、市区町村の活用状況は都道府県別に1~3割程度。静岡県の全33団体、長崎県の全21団体は活用実績がゼロだった。

都道府県には、来月まで各地で開かれる21年度上期「ブロック監理課長等会議」(入札契約担当課長会議)に先駆けアンケートを実施。同方式の活用団体の多くは、関係者間の調整・連携を課題に挙げた。「JVが受注し各構成員が各地域を担当する場合、現場代理人に各構成員が担当している箇所の指示をしても内容が伝わらないことがある」といった実態が報告されている。

未活用団体からは組合方式の受注で入札参加者が減少し、競争性が働かないデメリットを指摘する声が多かった。組合方式は、組合で建設業許可を取得し営業所の専任技術者を常時置く必要があるなど費用面や人的な面で負担が生じるという意見もあった。

都道府県の活用23団体のうち、実施形態は地域維持型JVが13団体、事業協同組合が2団体、両形態の複合が5団体、その他が3団体。未活用24団体に理由を聞いたところ、17団体が「現状の契約方式で不都合が生じていない」、4団体が「地域性を考慮し活用していない」、3団体が「活用の環境が整っていない」と回答した。

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