2021/08/31 鹿島/「現場の工場化」完成形へ着々/成瀬ダム堤体工事、自動化施行が通常パターンに

【建設工業新聞  8月 31日 1面記事掲載】

鹿島が秋田県の東南端にある東成瀬村で施工している「成瀬ダム」の建設工事で、自動化施工に磨きを掛けている。堤体構築で12~13台の無人の自動化重機が稼働しており、監視職員とシステムの両方のレベルが向上。一部に故障などが生じた場合でも、残りの重機で作業するためのプログラムを再構築し、速やかな再開が可能で、安定的な作業につなげている。目指している「現場の工場化」に着実に近づきつつあるという。

国土交通省東北地方整備局発注の「成瀬ダム堤体打設工事(第1期)」として、鹿島・前田建設・竹中土木JVが堤体構築を進めている。現地発生土材やセメント、水などを混合した材料「CSG」で、治水や利水などを狙いとする多目的ダムを建設する。堤高114・5メートル、堤体積485万立方メートルの規模。8月27日時点で約16%の堤体打設が完了している。1期工事の工期は2022年12月まで。

鹿島は、多数の建設機械が自律・自動運転で作業する次世代型建設生産システム「クワッドアクセル」を導入。施工計画に沿ったプログラムにより、振動ローラーと仕上げローラー、ブルドーザーが稼働する。あらかじめ決められた軌跡から外れたり、予定通りに走行できなかったりすると自動的に停止する。現場全体を見渡せる管制室から「ITパイロット」と呼ぶ担当技術者が常時監視しており、トラブルが生じた場合に対応する。鹿島JVの奈須野恭伸所長は「自動化が通常の施工パターンになってきた。自動化率90%を目指しており、かなり近い状態にきている。(同システムの)学習能力により、日々成長している」と話す。

人間の場合、10時間ブルドーザーを連続稼働することは困難だが、同システムでは問題なく実施できる。振動ローラーの軌跡が曲がるようなことも無いため、正確な施工や品質向上につながっている。各重機は複数台のセットで稼働している。仮に1台でトラブルが起きると、シミュレーターと呼ぶプログラムにより、1台減った形で作業軌跡を再検討し、5~10分程度の時間で作業を再開できるという。

想定よりも地質が悪かったため再調査を行った影響で、左岸側の作業が遅れている。左岸側が進展した段階で、CSGを連続で大量輸送できる設備「SP-TOM」を稼働する。ピークとなる再来年ころには合計23台の自動化重機で施工する見通し。最盛期には1カ月当たり30万立方メートルの打設を目指すという。

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