2022/02/18 東京労働局/小島敬二労働基準部長が講演/死亡災害撲滅へ墜落・転落防止対策徹底を

【建設工業新聞  2月 17日 4面記事掲載】

墜落・転落防止対策の徹底を--。東京労働局の小島敬二労働基準部長が都内で講演し、管内の2021年(1~12月)建設業死亡者数が24人(前年14人)と増加したことを踏まえて「死亡災害の撲滅に重点を置く」と強調。死亡災害の半数を占める「墜落・転落」の防止を最重要対策に位置付け、元請の安全衛生管理に関する法令違反の指導強化、新規入場者・採用者に対する安全衛生教育の充実などの必要性を説いた。

建設業労働災害防止協会(建災防)東京支部(松井隆弘支部長)が10日に開いたセミナーで、小島部長は最近の労働基準行政をテーマに講演した。21年の建設業死亡者数は全産業の約4割に当たる24人。同局の労働災害防止計画(18~22年度)の目標値23人を上回ってしまった。今年に入っても死亡災害が続き、10日時点で5人(前年2月末時点5人)が亡くなっている。

増加原因について小島部長は「明らかに墜落災害が増えている」と指摘。21年の死亡災害の発生現場や要因を見ると、建築工事が18人(前年5人)、墜落・転落が13人(2人)。休業4日以上の死傷者数1061人のうち、墜落・転落が263人と最も多かった。

東京労働局では毎年6月と12月に建設現場の集中指導を実施している。法令違反の発生割合を事項別で見ると、21年は「元請の安全衛生管理」が約8割強(例年約5割)、「墜落・転落防止」が約6割(約4割弱)と上昇した。小島部長は「法令違反の増加と死亡災害の増加に相関関係があると見ている」と分析した。

労働災害の発生要因を、元請の安全衛生担当者と現場の作業者に確認。両者とも「危機意識の低下」「作業の慣れ」という意見が多かった。危機意識の低下について元請からは「不安全行動が目立つ」「KY活動の形骸化」「朝礼や災防協のマンネリ化」が挙がった。作業の慣れでは「近道行動・省力行動が目立つ」「ヒューマンエラーが目立つ」といった意見が多かった。

統計や現場指導の結果などを踏まえ、小島部長は「不安全行動やKY活動の形骸化などが今後対策を考える上での視点になる」と述べた。死傷者数の多い「経験5年以内」「10年を越え20年以内」をターゲットにした災害防止対策の重要性も指摘。「転落・墜落防止措置の徹底に変わりはない。これ以上、1人も死亡災害を出さないという決意を皆さんと共有し、対策を進めたい」と呼び掛けた。

講演では建設業の働き方改革の推進も重要な取り組みとして説明した。時間外労働の罰則付き上限規制の適用が24年4月に迫る中、建設会社に対し意識統一に向けた取り組みやさまざまな工夫を要請。東京労働局と都内の労働基準監督署では「特に発注者の理解を求めていく。各種支援策や助成制度を用意し、皆さんの悩みに応えていきたい」と述べた。

労働災害防止を進めながら、長時間労働削減に関する自主的な取り組みが重要と主張。「各社や建災防での一層の促進をお願いしたい」と締めくくった。

日刊建設工業新聞の購読申し込みは、こちら

戻る