2022/05/12 国交省/歩切りの違法性周知、定義解説リーフレット自治体に送付

【建設工業新聞  5月 12日 1面記事掲載】

国土交通省は公共工事の設計金額の一部を切り下げて予定価格にする「歩切り」を行わないよう、地方自治体などに改めて働き掛ける。昨年1月の実態調査以降、全自治体で歩切りの根絶を確認したが、建設業団体から市町村などで歩切りがまだ存在すると指摘する声がある。歩切りの定義や違法性を分かりやすく解説するリーフレットを新たに作成し、11日付で都道府県などに送付。関係部局で歩切りへの認識を共有し適切な対応に当たるよう要請した。

リーフレットは都道府県と政令市に加え、独立行政法人や特殊法人を所管する府省庁にも送付。都道府県には管内市区町村への周知も要請した。公共工事品質確保促進法(公共工事品確法)では予定価格の適正な設定が発注者の責務と位置付けられている。府省庁の所管法人も含む公共発注者全般に歩切りの違法性を周知し注意を促す。

実務担当者にも理解しやすいようリーフレットには歩切りの該当例を明記。単なる慣例であったり、財政健全化や公共事業費削減、追加工事発生時の備えなどの目的があったりする場合も「運用を是正することが必要」と指摘した。予定価格の漏えい防止や事務効率化のための端数処理も歩切りに該当するが、入札契約手続きの透明性や公正性を確保するために合理的で極めて少額にとどまる場合「やむを得ない場合もある」とした。

見積もりなどを参考に予定価格を設定する場合、市場実態や妥当性を確認せず発注者が独自に乗率などを設定する運用も「実質的に歩切りと類似する結果を招く恐れがある」と明記した。資材などの実勢価格を適切に反映した積算の徹底を呼び掛ける。

昨年1月の実態調査では16市町村が「歩切りを行っている恐れがある」と判明したが、国交省の働き掛けでいずれも運用を見直した。再発防止を徹底するため国交省は、歩切りがダンピング受注の助長や、下請業者や現場職人へのしわ寄せにつながりかねないと注意喚起。歩切りの問題点と公共工事品確法の趣旨を理解し「安ければいい」という意識や慣例を見直すよう求めている。

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