2022/10/31 民間標準約款の利用「努力義務」に、価格偏重環境改善も/国交省有識者会議で意見交換

【建設工業新聞  10月 31日 1面記事掲載】

資材価格変動に対応した民間工事契約の在り方などを検討している国土交通省の有識者会議で、中央建設業審議会(中建審)が作成・勧告する民間工事の標準請負契約約款の利用を「努力義務」などに一段引き上げるべきと訴える声が上がった。民民間の「契約自由の原則」にとらわれず、実際の契約に見られる片務性を是正する対策が必要との問題意識がある。現状の「価格」偏重の競争環境を改善する有効なツールとして建設キャリアアップシステム(CCUS)の活用を提案する委員もいた。

26日に開かれた「持続可能な建設業に向けた環境整備検討会」の第4回会合で行われた意見交換の内容を国交省が明らかにした。民間工事契約で標準約款の一部規定が発注者の意向で削除・修正されている実態を踏まえ、ある委員は「契約自由の原則」を過度に順守する必要はないとの意見を表明。ほかの委員も受発注者関係は対等であるべきとの前提に立ち、法制度上の対応策を講じる必要性に言及した。

建設業法で規定する「不当に低い請負代金の禁止」に違反した発注者への勧告対象から、民間事業者が除外されていることを疑問視する委員が複数いた。この規定は行政権限のすみ分けを背景に、独占禁止法を所管する公正取引委員会への「措置請求」で対応している。委員からは業法に基づく勧告や報告・資料の提出請求も可能とするよう見直しを求める声があった。

契約の透明性を高める観点でコストプラスフィー契約・オープンブック方式やCM(コンストラクションマネジメント)方式も話題になった。総価契約の請負金額の中にリスク対応分として含まれる予備費を「リスクプレミアム」として明示し、受発注者間で共有するアイデアも示された。

ある委員は契約交渉の材料として技術力やノウハウが大きなウエートを占めるIT業界を例に取り、建設業界では価格以外の評価軸が乏しいと指摘。CCUSを活用すれば建設会社の施工体制や施工能力を可視化でき、新たな評価軸として「技術的差異」を見える化できるのではと提案した。

会合には国交省の長橋和久不動産・建設経済局長も出席し、委員らに「タブーなく議論してほしい」と呼び掛けた。新3K(給与・休暇・希望)を掛け声だけでなく制度的に担保する必要性を訴え、「そこにCCUSがどう機能し新3Kの一つの希望につながっていくか」と今後を展望した。

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