2026/01/23 商習慣を変える3-標準労務費始動・4/旧来制度の問題解消の契機に
【建設工業新聞 01月 23日 2面記事掲載】
改正建設業法の成立以降、「労務費に関する基準(標準労務費)」の作成や運用の方向性を11回にわたって議論した中央建設業審議会(中建審)のワーキンググループ(WG)は、契約・支払い段階の実効性確保策に最も多くの時間を割いた。全国建設業協会(全建)の代表者として元請の立場で参加した岡山県建設業協会の荒木雷太会長は、「(既存の)諸制度の不具合に目が行かないと、現場にそぐわない理屈だけが独り歩きしてしまう」と当初から懸念。WGで積み重ねた議論は、これまで手付かずだった諸制度の変革に向けた扉を開く契機となった。
◇「下請泣かせない」モラル定着も大事
荒木氏が何度も取り上げたのは「歩掛かり」の問題だ。標準労務費の工種・作業別の「基準値」は、土木工事標準歩掛かりなど国土交通省直轄工事で用いる数値の採用を原則とする。しかし直轄工事が前提としない小ロット工事は手間がかさむため、標準歩掛かりの適用は現実的ではない。これは地方自治体発注工事で正確な積算を阻んでいるという意味で、地域建設会社を悩ませてきた長年の課題だ。標準労務費の運用が始まった今、小ロット工事に合わせて基準値を適切に補正して運用する方法を明確に示す必要がある。
自治体が現場の実態に合わせて独自の歩掛かりを採用する動きが進んでこなかったのには理由がある。国交省が67都道府県・政令市に本年度実施した調査によると、独自の歩掛かりがない34団体のうち17団体が「会計検査院から独自設定を指摘される懸念」を理由に挙げた。国交省は個別の自治体の好事例をまとめた事例集を年度内に整理し、水平展開する予定。国交省が明確な姿勢を示すことによって、自治体での活用が広がる。小ロット工事で標準労務費が活用しやすい環境もできてくるだろう。
公共工事の入札制度の改善も、荒木氏がWGで繰り返し主張したテーマだ。受注時に落札率が掛かる状態では、労務費の完全な行き渡りが難しいとして対策を求めた。国交省は実際の入札で労務費などの適切な見積もりが行われず、過去の実績から予定価格を推算する慣行があることを問題視。これを変える方向で入札制度を不断に見直す姿勢を示している。最終的な結論は得られなかったが、制度改善の必要性を共有できたことは成果と言える。
荒木氏は、「公共工事と民間工事のマーケットは考え方の根本、ルーツから理念が違う」と指摘し、同じような目線で扱うべきではないと訴える。民間市場は入札のように「よーいドン」で競争が始まるのではなく、それ以前から各社が独自の戦略で差別化を図り、特命や専属を勝ち取る競争が行われている。仮に得意先から厳しい価格で請け負わざるを得なくとも、そのしわ寄せを弱い立場に押し付けず、「下請を泣かさない」。こうした当たり前のことをどう定着させるか。
標準労務費という「ルール」で縛ることで、一定の効果が期待できる。その上で、自由な競争を阻害することなく、業界全体で持つべき「モラル」をどう養っていくか。担い手を確保し持続可能な建設業とするため、取り組むべき課題は依然として山積している。
◇「下請泣かせない」モラル定着も大事
荒木氏が何度も取り上げたのは「歩掛かり」の問題だ。標準労務費の工種・作業別の「基準値」は、土木工事標準歩掛かりなど国土交通省直轄工事で用いる数値の採用を原則とする。しかし直轄工事が前提としない小ロット工事は手間がかさむため、標準歩掛かりの適用は現実的ではない。これは地方自治体発注工事で正確な積算を阻んでいるという意味で、地域建設会社を悩ませてきた長年の課題だ。標準労務費の運用が始まった今、小ロット工事に合わせて基準値を適切に補正して運用する方法を明確に示す必要がある。
自治体が現場の実態に合わせて独自の歩掛かりを採用する動きが進んでこなかったのには理由がある。国交省が67都道府県・政令市に本年度実施した調査によると、独自の歩掛かりがない34団体のうち17団体が「会計検査院から独自設定を指摘される懸念」を理由に挙げた。国交省は個別の自治体の好事例をまとめた事例集を年度内に整理し、水平展開する予定。国交省が明確な姿勢を示すことによって、自治体での活用が広がる。小ロット工事で標準労務費が活用しやすい環境もできてくるだろう。
公共工事の入札制度の改善も、荒木氏がWGで繰り返し主張したテーマだ。受注時に落札率が掛かる状態では、労務費の完全な行き渡りが難しいとして対策を求めた。国交省は実際の入札で労務費などの適切な見積もりが行われず、過去の実績から予定価格を推算する慣行があることを問題視。これを変える方向で入札制度を不断に見直す姿勢を示している。最終的な結論は得られなかったが、制度改善の必要性を共有できたことは成果と言える。
荒木氏は、「公共工事と民間工事のマーケットは考え方の根本、ルーツから理念が違う」と指摘し、同じような目線で扱うべきではないと訴える。民間市場は入札のように「よーいドン」で競争が始まるのではなく、それ以前から各社が独自の戦略で差別化を図り、特命や専属を勝ち取る競争が行われている。仮に得意先から厳しい価格で請け負わざるを得なくとも、そのしわ寄せを弱い立場に押し付けず、「下請を泣かさない」。こうした当たり前のことをどう定着させるか。
標準労務費という「ルール」で縛ることで、一定の効果が期待できる。その上で、自由な競争を阻害することなく、業界全体で持つべき「モラル」をどう養っていくか。担い手を確保し持続可能な建設業とするため、取り組むべき課題は依然として山積している。
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