2013/07/30 技能者賃金引き上げ-6割前向き/労務単価引き上げ奏功/国交省、調査途中集計

【建設工業新聞 7月 30日 記事掲載】

公共工事設計労務単価の引き上げを受け、建設会社が技能労働者の賃金水準を上げる動きが鮮明になってきた。国土交通省が1万6000業者を対象に実施中の「下請取引等実態調査」で回収した調査票の一部を集計したところ、賃金を「引き上げ」「引き上げ予定」との回答が6割に上った。「若年層の入職を促進するため」と業界の将来を見据えて賃金引き上げを計画している回答も見られた。

下請取引等実態調査は、下請取引などの実態を把握。建設業関係法令に違反している場合は指導を行う目的で同省が毎年度、大臣・知事許可業者を対象に実施している。本年度調査は8月末が回答期限で、調査項目には、設計労務単価の引き上げなどを踏まえた賃金水準などの動向や、同省が業界と共に対策を進める社会保険への加入状況などを加えている。同省が既に回収した数百件の調査票を集計した結果、賃金の引き上げや引き上げ予定が6割に上り、毎月の給料だけでなく、ボーナスを引き上げるとの回答もあった。

賃金を上げる最大の理由となった13年度の公共工事設計労務単価は、対象51職種の全国単純平均が前年度比15%上昇。これを契機に賃金引き上げに動いた経営者が多いとみられる。さらに、「実勢価格の上昇を考慮に入れた」との回答も多く、不足する技能労働者を賃金引き上げによって確保しようという意識も働いているようだ。国交省は「労務単価の引き上げが技能労働者の賃金アップという目に見えた形で現れ始めた。まだ様子を見ている経営者もいるようだが、今後さらに賃金を上げる動きが増えていくのではないか」(土地・建設産業局)と期待している。

技能労働者の賃金引き上げをめぐっては、日本建設業連合会(日建連)が「労務賃金改善等推進要綱」をつくり具体的な取り組みをスタート。全国建設業協会(全建)も「適正な公共事業の執行に関する取り組み強化キャンペーン」を始めた。国交省もこれらの動きをにらみながら、実態調査結果を踏まえて技能労働者の処遇改善に向けた取り組みに一段と力を入れていく考えだ。

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