2013/10/24 事前防災のインフラ効果鮮明/台風18号、1兆円被害抑止も/国民の理解促進へ

【建設工業新聞 10月 23日 1面記事掲載】

自然災害が頻発する中、インフラによる人的・経済的被害の抑止効果が各地で浮き彫りになっている。9月の台風18号の豪雨では、京都市内で一部浸水被害が出たが、ダムによる洪水調節などで大規模な氾濫は防止できた。東北の北上川上流域でも市街地が浸水被害を免れた。建設業界からも「被害を免れた地域でのインフラの防災機能をもっと広報すべきだ」(地域建設業幹部)といった声が強まっている。  

  台風18号は、四国から北海道までの広範囲に大雨をもたらした。京都市内では、桂川の羽束師橋付近で水位が上がり、氾濫の恐れが高まった。国土交通省によると、淀川水系の日吉ダムで異常洪水時防災操作を行うなど洪水調節機能をフル稼働。41年ぶりに琵琶湖の洗堰の全閉操作も行われ、現地では必死の水防活動も展開された。  

  羽束師橋は、桂川が宇治川や木津川と合流する地点の上流部に位置し、周辺には市街地が広がる。国交省は、桂川付近での洪水防止効果などについて検証作業を進めており、「仮に氾濫を防げなかった場合には約1・2万戸という規模で浸水被害が出て、浸水深の深い地域では人命が失われる危険性もあった」。経済的被害は1兆円規模に膨れ上がった可能性もあるという。北上川上流域でも観測史上1位の降雨が記録されたが、盛岡市にある四十四田ダムなどの効果で下流の被害が軽くて済んだ。最悪の場合は約3200億円もの被害が出た可能性があるとみられている。  

  日本列島は近年、豪雨災害が各地で頻発している。災害が起きるとその被害状況には多くの注目が集まるが、インフラ整備による被害の軽減効果はあまり大きな話題にはならない。例えば、信濃川水系では、04年の豪雨を契機に大規模な河川改修などが集中的に実施されたことで、11年の新潟・福島豪雨の際は被害が大幅に軽減。降雨量は04年豪雨の1・4倍に達したにもかかわらず、一般資産など被害額は約50分の1、被災建物数は1割未満にとどめることができた。国交省の地方整備局の幹部からは「インフラや建設産業が地域を支えていることを、しっかりと広報しながら一般の人の理解を深めるよう努力したい」といった声も出ている。事前防災を進めるためにも、着実なインフラ整備とともに、正確な情報の発信による理解促進を図ることが重要といえそうだ。  

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