2013/10/25 人材不足で公共事業削減?/業界、財務省論点に「本末転倒」/まず処遇改善必要

【建設工業新聞 10月 25日 1面記事掲載】

就業者不足に合わせて予算を減らすのは本末転倒-。財務省が財政制度等審議会(財務相の諮問機関)に、公共事業の予算を不足傾向にある現場労働者や技術者の数に見合う規模に縮小すべきだとの論点を提示したことに、業界関係者から反論の声が上がっている。現在の業界の人手不足はもともと公共事業の削減が招いた悪循環がその一因。論点が現実になれば「業界はさらに疲弊しかねない」との危機感が募っている。

ピークだった1995年に663万人いた建設就業者は現在、500万人を割り込むまで減っている。建設投資の縮小で受注競争が激化。そのあおりで労働者の処遇が低下し、多くの人が将来の希望がもてないとして業界を離れた。少子化傾向が重なり、就業者の高齢化も年々深刻化する一方だ。国交省は、社会資本整備の担い手となる技能労働者の処遇を早急に改善しない限り、国民の安全・安心も危うくなると判断。13年度の公共工事設計労務単価の大幅引き上げや、ダンピング対策の強化などに取り組み、労働者に適正な賃金が支払われるようにする活動を加速させている。

そうした中、21日に開かれた財政審の財政制度分科会に財務省は、「社会資本整備を巡る現状と課題」と題した資料を配布。この中で、「建設に従事する労働者、技術者の不足傾向が全国的に見られることから、被災地および全国における円滑な予算執行を図るとの観点から適切な規模への見直しも必要なのではないか」と公共事業費の削減を強くにじませる論点を提示した。

この論点に業界関係者の一人は「全国的に技能労働者が不足している状況に合わせる形で財務省が事業規模を縮小する方向に導こうとしている」と指摘。官民が技能労働者の処遇改善に一丸となって取り組んでいることに「水を差すことになる」と批判する。安倍政権が進めている労働者の賃金アップにも逆行するとも主張する。一定の事業量が確保されなければ作業員の賃金アップは難しく、業界の将来を支える若年労働者の入職も進まない。公共事業を再び縮小する動きが現実になれば、将来を見通せない建設業界の人材不足が一段と深刻化するのは必至だ。当面の焦点は14年度予算。補正予算ではなく、当初予算によって必要な事業規模を安定的・継続的に確保できるかどうかがカギになる。

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