2013/11/5 誇り持てる産業へ-全建ブロック会議を振り返る・上/今こそ中長期ビジョン必要

【建設工業新聞 11月 5日 1面記事掲載】

◇明るい兆しを確たるものへ
全国建設業協会(全建、淺沼健一会長)と国土交通省などによる13年度の地域懇談会・ブロック会議が、10月31日の九州地区で全日程を終えた。建設投資に追い風が吹き始める一方で、建設業の中長期の先行きには不安も横たわる。将来にわたって国民の安全・安心を守る役割を果たしていくには何が必要か。本年度の会合から見えてきた課題を報告する。(編集部・牧野洋久)

「昨年と比べて明らかに雰囲気が変わった。共に改善を目指そうという具体的な議論ができたことで、官民パートナーシップ体制がより強固になった」。淺沼会長は一連の会合をこう振り返った。

各地区の会合では、地元の建設業協会から「建設業の将来に向かっても明るい話題が出てきている」(愛知建協の増永防夫会長)、「公共事業の減少傾向に歯止めが掛かり、マインドが上向きつつある」(石川建協の北川義信会長)といった声が上がった。

東日本大震災の復興本格化、全国的な防災・減災を目指す国土強靱(きょうじん)化、インフラ老朽化対策、そして政権交代と、建設業界をめぐる環境はこの1年で大きく動いた。状況が悪化する一方だった昨年までとは様変わりといってもよい。

だが、危機感が払しょくされたわけではない。広島建協の檜山典英会長は中国地区の会合で、「建設投資は増加傾向にあるが、一方で人材不足やコスト上昇は顕著で厳しい経営が続いている。東日本大震災の復興事業や東京五輪に向けた投資がわれわれの地方にマイナスに影響することが懸念される」と表明。香川建協の森田紘一会長も四国地区の会合で「地域建設業は、長年にわたる投資の減少や地域経済の低迷で疲弊し、技能労働者の減少で企業活動にも支障を来している」と窮状を訴えた。

そうした中で、全建側がその必要性を強く訴えたのが、「中長期ビジョン」の明示だ。2020年の東京五輪開催も決まり、民間も含めた建設投資の増加が期待されているが、何も対策を講じなければ、五輪後には建設投資が再び急減する可能性が高い。

建設投資が安定せず、増減を繰り返してきた構造が地域建設業の疲弊を招き、業界で働く人たちを苦しめてきた。若者を雇用するにも、重機を維持するにも、必要なのは中長期の経営見通しだ。

淺沼会長は各地の会合を通じて、「投資額の盛り込まれた中長期の国土保全ビジョンを示してほしい」と国交省側に繰り返し求めた。五輪後の景気後退局面も視野に入れた2025年のあるべき姿を描き、国の方向性を定めていこうという提案だ。

「建設業界にとって風向きは変わりつつある。それをチャンスと捉えつつも、浮かれず冷静に前に進まなければならない」。淺沼会長はそう言って表情を引き締める。当面の最重要課題として、官民が注目する点は一致している。国の14年度当初予算での公共事業費の動向だ。

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