2013/11/8 誇り持てる産業へ-全建ブロック会議を振り返る・下/処遇改善に利益出る構造を

【建設工業新聞 11月 7日 1面記事掲載】

◇自治体も発注者責任果たせ
「全建としては、公共工事設計労務単価の引き上げが建設産業全体に及ぼす影響力を重々理解し、当たり前のことを当たり前に行っていく。ノブレス・オブリージュ(位高ければ徳高きを要す)の精神を持って対応したい」

全国建設業協会(全建)の淺沼健一会長は、技能労働者の処遇改善へ向けた強い姿勢を示す。

東北建設業協会連合会の佐藤博俊会長は「今まで処遇が悪すぎた。子ども2人を高校に通わせることができるくらいの労賃でなければ非人道的だ」とまで言い切る。

東京建設業協会の近藤晴貞会長は、中国地区の会合後の会見で、「『これだけの年収を確保するから生涯安心して働ける』というように、理解しやすい形で広報しなければならない」と指摘。「そのためにはどの程度の労務単価が必要になるのか、というところまで作り込んで交渉することが必要だ」と述べ、さらに踏み込んだ対応の重要性に言及した。

ただ、処遇改善を着実に進めるには、地域建設業の健全経営が不可欠だ。淺沼会長は「きちんと働いたら、しっかりと賃金を払う」としつつ、「その前提として、入り口の入札契約や、設計変更や書類の簡素化など出口の問題に取り組み、利益が出るような制度にしてもらいたい。それを地方自治体などにも徹底してほしい」と国交省側に求めた。

一部の地方自治体や公的発注機関には、入札契約制度の改善が依然として進んでいないところもある。政府・与党で検討が進む公共工事品質確保促進法(公共工事品確法)などの改正に対する期待感が各地の会合で表明されたのも、そうした背景があるからだ。

今回、特に興味深いやりとりがあったのは、九州地区の会合だ。九州建設業協会は、九州各県と福岡市などの主要市に対し、入札契約制度に関するアンケートを事前に実施。その結果を会合の場で一覧表にして配布した。予定価格の公表時期や最低制限価格の概算率、指名競争入札の導入状況などが一目で分かる。

九州建協の橋口光徳会長は、一覧表を基に、「最新の公共工事契約制度運用連絡協議会(公契連)モデルを適用していない理由は?」「指名競争入札をやらない特別な理由は?」と該当する自治体に尋ねていった。「各自治体の成績表のようなもの。しっかりと改善してほしい」(建協幹部)との思いを込めたという。

国交省の認識も業界と一致する。「公共事業をして赤字になるのはおかしい。地方整備局だけではなく、県、市町村などの発注者がきちんと発注者責任を果たすことが重要だ」(野田徹北陸地方整備局長)。

国民から感謝され、自らが誇りを持てる建設業界-。それが淺沼会長が目指す姿だ。東京五輪の先にある2025年という将来を明るいものにするために、どう前進していくか。官民による具体的な一歩が今、求められている。

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