2014/5/15 政府/国土強靱化実行計画素案/大都市の建築物、15年までに耐震化率90%に

【建設工業新聞 5月 15日 1面記事掲載】

政府は、国土強靱(きょうじん)化の基本計画と実行計画の素案をまとめた。実行計画の素案では、15年までに東京など大都市にある建築物の耐震化率を現在の約80%から90%、16年までに千葉以西の太平洋側にある海岸堤防の整備率を現在のほぼ倍に引き上げる目標を設定。巨大地震で懸念される建築物の倒壊や大津波などに備えるとした。政府は基本計画を5月末に閣議決定する。基本計画と実行計画「アクションプラン2014」の各素案は、14日に開かれた政府の「ナショナル・レジリエンス(防災・減災)懇談会」(座長・藤井聡内閣官房参与)で報告された。各素案に対する意見募集を20日まで受け付ける。

基本計画は、今後30年以内の発生確率が70%とされる南海トラフ、首都直下の両大地震が発生しても迅速に復旧・復興を行えるようにするなど強靱化の狙いを明記。建築物の耐震化などに国と自治体、民間事業者が一体で取り組むとした。その上で、強靱化を推進する住宅・都市整備やインフラ老朽化対策といった15の施策分野ごとに今後約5年間の対応方針を明示した。住宅・都市整備では住宅や公共建築物の耐震化や密集市街地での延焼防止対策を推進。インフラ老朽化対策では、真に必要なインフラに絞って点検・診断・修繕・更新に循環的に取り組む「メンテナンスサイクル」を定着させるとした。

基本計画の施策を着実に推進するため、1年ごとに実行計画を策定。優先して取り組む施策と達成目標を決める。最初の実行計画の素案では、首都直下地震で火災の延焼が懸念される東京などの密集市街地の解消に向け、建築物の耐震化や避難路の整備などを優先的に実施。密集市街地の改善整備面積を20年までに現在の0ヘクタール(11年)から約6000ヘクタールにする目標を設定した。

南海トラフ地震で高さ3メートル以上の津波の襲来が予測される太平洋に面した千葉から鹿児島にかけては、16年までに太平洋側での海岸堤防の整備率(計画高までの整備と耐震化)を約31%から約66%に引き上げる。

達成目標は、今年初めから4月にかけて実施した大規模災害への脆弱(ぜいじゃく)性評価の結果を踏まえて設定した。現在の評価値がゼロだった大都市で防災対策に本格着手した地下街の割合は18年、精油所の耐震強化率は20年までにそれぞれ100%を目指すとしている。

政府は、基本計画と実行計画の決定後、関係府省に強靱化に関する他の計画の見直しや施策の実行を要請。地方自治体に対しては、地域計画の策定や施策の実行に役立ててもらう。

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