2014/7/25 厳しい行政指導で一人親方増加?/社会保険未加入、厚労省への通報相次ぐ

【建設工業新聞 7月 25日 2面記事掲載】

国土交通省や各都道府県が建設業許可や経営事項審査(経審)の申請時などに行っている建設業者の社会保険加入確認・指導で、法人化した専門工事業者が社会保険に加入できず、法人を廃業した上で、一人親方に戻っている例が増えつつある。建設技能者の処遇改善が社会保険への加入促進の目的だが、「行政機関による急激な締め付けは逆効果」との意見も業界内から出始めている。ある専門工事業者は「昨年、のれんわけしてもらい、法人化して建設業許可を得たが、その後、社員の社会保険の加入状況を調査され、加入できないため会社をたたんだ」という。

国交省や都道府県の建設業許可部局は、建設業者の社会保険加入状況を確認し、未加入業者には加入を指導している。未加入だった場合、1回目の指導の後、4カ月の猶予期間を置き、なお未加入の場合は2回目の指導を実施。さらに2カ月の間に加入しなければ厚生労働省の担当部局に通報している。国交省がまとめた14年3月末時点の加入状況によると、12年11月からの1年5カ月の間に8316業者が指導を受けて新たに社会保険に加入。再三の指導にもかかわらず加入しなかったとして、8273業者が厚労省の社会保険担当部局に通報された。

通報された業者は、年金事務所による加入指導や立ち入り検査を受け、それでも加入しない場合は再び許可部局に戻され、建設業法に基づく指示処分や営業停止処分が行われている。ある専門工事業者は「17年度までに加入すればよいと思っていた。今すぐ加入しろと言われても、そんなお金はない。法人化すれば職人のためになると思ってやったが、法人を廃業し、職人はすべて一人親方になってもらうしかない」という。別の業者は「急に行政指導を厳しくされても、今後ついていけない業者が増え、結果的に職人が減るのではないか」と懸念する。

社会保険への加入は、建設技能者の処遇を改善し、入職促進につなげるのが最大の狙い。加入促進に向けた取り締まりの強化は必要だが、急激な環境の変化は、結果的に技能者の処遇を悪化させるケースもある。建設行政部局のかじ取りは今後一層難しくなりそうだ。

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