2014/11/10 国交省/社会保険加入促進へ追加策/法定福利費の別枠計上、見積もり条件に明記

【建設工業新聞 11月 10日 1面記事掲載】

国土交通省は、建設技能労働者の社会保険加入を促進するための追加策を検討する。元請企業が下請企業に見積もりを依頼する際に示す工事見積もり条件書で、社会保険加入に必要な法定福利費が別枠計上されるようにすることを想定している。法定福利費を内訳明示した標準見積書の活用と組み合わせ、法定福利費が発注者から元請、下請を通じて技能労働者に確実に流れるようにする。近く始める実態調査の結果を踏まえて具体策を練る。

官民で構成する社会保険未加入対策推進協議会が昨年9月に一斉活用を申し合わせた標準見積書は、専門工事業56団体が作成済み。申し合わせ文書では、元請の役割について「下請企業との契約に当たって、標準見積書の活用などにより法定福利費を内訳明示した見積書を提出するよう働き掛け、提出された見積書を尊重する」としている。ただ、昨年10~12月に国交省が行った実態調査では、元請が十分に活用するには至っていない状況が浮き彫りになっている。

近く行う実態調査では、昨年に引き続き社会保険加入状況と標準見積書の活用状況を把握する。その結果、活用が依然として不十分であることが判明すれば、元請から下請に対する指導を徹底するよう要請するなど、標準見積書の活用が一段と進む方策を検討する。さらに追加策として、工事見積もり条件書への内訳明示を検討する。現状では元請となる各建設会社で条件書の様式はまちまち。会社によっては「適正な法定福利費を明示して見積書を作成すること」といった文言を入れているケースがある一方、法定福利費を含めた形の見積書を作成するようにしている事例もあるという。

下請が標準見積書を使って内訳明示した見積書を提出する前段階で、元請から下請に対する条件明示が徹底されれば、法定福利費が各段階で適切に転嫁され、現場の技能労働者まで行き渡る流れが確実になると同省はみている。同省の毛利信二土地・建設産業局長は先週、都内で開かれた会合の席上、法定福利費について「代金がどんぶり勘定で払われてしまい、分からなくなるのが一番の問題」と指摘。景気が上向き、ダンピングが続いた状況を脱して請負代金が適正水準に近づきつつある中で、「今こそ改善できるチャンスと捉え、法定福利費が着実に行き渡るような方策を考えていきたい」と述べた。

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