2015/01/21 社会保険未加入対策-建設業界の対応加速/申し合わせ受け、ゼネコンら動き活発

【建設工業新聞 1月 21日 2面記事掲載】

国土交通省や建設業団体が19日に社会保険未加入対策の強化を申し合わせたのを受け、企業の動きが早くも活発化してきた。法定福利費を内訳明示した標準見積書の扱いに関する社内文書の作成準備に入ったゼネコンや、協力会社にあらためて対応を要請する方針を固めたゼネコンが出てきた。

申し合わせは、下請業者が元請業者に対し、法定福利費を内訳明示した見積書を提出しやすい環境を整えるのが狙いだ。あるゼネコンの担当者は、「昨年、1次下請は15年度から原則として社会保険加入会社に限定するよう支店、作業所に通知した。工事によっては、未加入の2次以下に加入を指導する特約を設けてもいる。それでも日本建設業連合会(日建連)が2次以下に踏み込んだ要綱を出した。再度、社内に通知する必要がある」と話す。手持ち工事ごとに適正な見積書のやり取りが行われているかも併せて確認する必要があるという。

社会保険未加入が問題となって以降、ある設備工事会社は、すべての協力会社を対象に、健康保険・厚生年金・労災保険の加入状況を一斉に調査。一つでも未加入だった会社には14年12月に調査書を再発送した。適正な見積書を提出するよう協力会社回りを行う準備に入った元請企業もあり、対応を一段と強化する動きが広がっている。

一方、元請・下請双方とも依然多くの課題を抱える。その一つが加入者のチェックだ。日建連は「社会保険加入促進要綱」を決定した際に、加入を作業員名簿などで確認するとしたが、あるゼネコンの担当者は「個人情報保護の問題がある。施工者側だけが情報を管理するのはリスクがある。関係機関に相談したが、『まずい部分を黒塗りにした書類を全員分もらってはどうか』などと、現実的ではない回答が示された」という。加入・未加入を確認する負担やリスクを施工現場だけでなく国も担ったり、加入者だけが確実に分かったりするような措置や管理手法の必要性を指摘する意見は少なくない。

標準見積書をめぐる課題も山積している。「体裁を整えた標準見積書を持っていながら、出してこない会社がある」とあるゼネコンの担当者。協力会社に標準見積書の提出を要請しても、「下請代金の総額表示をあえて求める協力会社もある。適正な見積書がどの程度出てくるのか疑問だ」とみる。申し合わせの実効性を高めていく上でも官民の協力が求められる。

日刊建設工業新聞の購読申し込みは、こちら

戻る