2015/07/14 社会保険遡及適用、立入検査前は求めず/年金機構が見解/指導後加入は新規扱い

【建設工業新聞 7月 14日 1面記事掲載】

社会保険に加入していない企業が新たに加入すると、過去2年分の保険料を一気に請求される-。建設業の社会保険未加入問題で、加入に踏み切れない理由として、保険料の納付を過去2年にさかのぼって求める「遡及(そきゅう)適用」の問題を訴える声が一部の業界関係者の間で出ている。ただ、一方、日本年金機構は「立ち入り検査前に自らの申し出で加入すれば、新規加入として扱い、遡及適用は行わない」(担当者)との見解を示す。遡及適用がやや誤解されて伝わっているようだ。国土交通省や都道府県は社会保険に未加入の企業に対し、12年11月から建設業許可や経営事項審査(経審)の申請などに合わせて加入指導を実施している。指導に応じない場合は厚生労働省に通報する。通報後、厚生年金や健康保険については日本年金機構の年金事務所が文書や電話、個別訪問で、加入義務や保険料額、支払い方法などを説明し、加入指導を行っている。それでも加入しない事業所には、厚生年金保険法に基づき立ち入り検査に踏み切り、帳簿や書類の提出を求めたり、検査したりした上で、強制的に加入手続きを行うことがある。

遡及適用は時効期限の過去2年間(最大)の保険料を請求することだが、立ち入り検査まで至った場合でしか生じず、まれなケースといえる。年金事務所の指導を受けた後に自主的な申し出で加入すれば、新規加入と見なし、過去にさかのぼって保険料の納付を求めることはないという。さらに、立ち入り検査の直前には現地で加入指導を再度行い、その時点で加入を申し出ても遡及適用にはならない。年金事務所は加入指導から3カ月後を目安に立ち入り検査を実施している。遡及適用に至るのは、最初の国交省による加入指導から相当の期間がたち、度重なる指導にも応じなかったケースだ。指導される前に自ら加入しておけば問題はない。立ち入り検査前なら遡及適用の対象にならないことは、国交省が全国10カ所で開いている社会保険未加入対策のキャラバン(地方説明会)でも説明されている。キャラバンで説明を担当した年金機構中国ブロック本部の担当者は「社会保険の加入義務を理解し、法令順守や企業経営に加え、事業所間の不公平を是正する観点も踏まえて、指導に至る前に加入してほしい」と話している。

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