2015/11/09 全建ブロック会議を振り返る・上/「危機管理産業」どう維持

【建設工業新聞 11月 9日 1面記事掲載】

◇大型補正と当初予算増額を
全国建設業協会(全建、近藤晴貞会長)と国土交通省による15年度地域懇談会・ブロック会議が5日の九州で全日程を終えた。工事量の地域格差が拡大し、担い手の確保・定着が地域建設会社の重要課題となる中で行われた本年度の会合。全建と傘下の都道府県建設業協会は、将来を見据えつつ、強い使命感を持って発注機関と向き合った。(編集部・溝口和幸)

「十数年で従業員は半減、売上高が4割程度に落ちた会社もある」。井森浩視山口県建設業協会会長は、ある会員会社の窮状をそう説明する。

国の15年度予算の公共事業費は6・0兆円で14年度から横ばい。だが14年度は13年度大型補正予算の繰り越し執行があり、15年度上期(4~9月)は請負金額が前年度を下回った地域が多い。公共工事前払金保証事業会社の統計から全建が算出した地域別の請負金額によると、国からの請負金額の減少率が34道府県で2桁に達し、京都、岡山、愛媛、長崎、宮崎の5府県は4割を超す減少になった。13年度と比較しても、34道府県は減少率が2桁になっている。

「労務・資材費が上がっているのだから、予算が増えなければ工事量は減る」(川原哲博徳島県建設業協会会長)。各地の会合では、当初予算の増額や、大型補正予算の早期編成を求める主張が相次いだ。

厳しい財政状況下で当初予算の大幅増が難しいことはどの協会の首脳も承知している。それでも増額を求めるのは、地域のインフラの整備・維持管理や災害復旧を担っている自負があるからだ。佐藤博俊宮城県建設業協会会長は「地域建設業は危機管理産業であり、地域の町医者的な存在だ」と訴えた。

9月の関東・東北豪雨では、茨城県建設業協会の会員会社が社屋を濁流にのまれながら越水箇所の復旧に取り掛かった。「地域の安全・安心を守る使命感に敬意を表する」。近藤会長は、各地の会合で会員会社に謝意を示し、「建設業が活力を持ち、災害対応力を維持することが重要だ」と訴え続けた。上田信和富山県建設業協会常任理事は「地域の建設会社が必要な絶対数を割り込んではならない」と強調する。

全建側には、政府の物価上昇率目標である2%を引き合いに、「緩やかにでも公共投資は増やすべきだ」(首脳)という思いがある。現在の公共事業費の水準は、民主党政権に移行する前の自民党政権時(09年度当初予算7・1兆円)を下回っており、「7兆円を最低水準にすべきだ」(同)との主張も根強い。

関東甲信越、四国、北陸の3地区の会合を終えた10月19日。石井啓一国交相を表敬訪問した近藤会長は、「当初予算の着実な増額確保と、大型補正予算の早期編成が必要」と申し入れた。16年度の政府予算の編成に向けた攻防が、これから年末にかけて本格化する。.

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